世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【引継という魔物。】

どんな仕事においても、業務引継は発生する。そして、自身を含めて「うまく引き継げた」という話はあまり聞かない。

《ポイント》
●目先は手順だが、理解は理由。
まずは、異動者は「仕事を平常な形で回す」事が求められる。それ故に、引継書は、どうしても「手順」を記すことに終始しがち。
しかし、一定の習熟をすると「なぜ、先人たちはこうしたのか?」という疑問に突き当たり、往々にして、引継書にはそこまで書いていない。「取り敢えずを乗り切る」だけの書面になりがちだ。

●あくまでも「全体の小分け」がパーツ。
引継を何度となく受けてきたが、ありがちなのは、仕事をパーツ分けして説明をすることに終始するパターン。確かに、日々の仕事はパーツをそれぞれこなすことであり、その観点からすると、その引継になりがちなのはよくわかる。
しかし、小分けの仕事をまとめて持っているのには、何らかの理由がある。それこそが、「担当者の仕事全体のミッション」であり、これがわからないと本当の意味での習熟や深度化は難しい。

《問題の所在》
●「知らない」認識のギャップ。
当たり前だが、前任者は後任より仕事を知っている。そして、前任者も「知らない」時代はあったはずなのだが、一定期間の業務の積み上げにより、その「知らない」は「理解した」になっていく。そうなると、「知らない」頃に、何に苦しんだのか、すら忘れてしまう。
引き継ぎの直前に資料を作っても、「知らない」認識が既にしてズレているので、後任にとっては、何がなんだか?になったり、さわりしか書いていないので使えない引き継ぎになったりしてしまう。そして、前任者が苦しみ、傷つきながら覚えた事と同じ羽目に陥る。

一番効果的な引継は「覚える段階で、仕事の趣旨や理由を書きながらマニュアル化する」こと。ギャップも発生しないし、その後の業務改善の時の拠り所にもなる。勿論、アップアップしながら、は大変だが、「苦しみ、傷つきながら覚える」ループを断ち切るには、踏ん張りが求められる。

自戒の念を込めて。