世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【国宝】深窓秘抄

藤田美術館所蔵、彩牋墨書、平安時代
 
平安時代歌人藤原公任が編んだ私撰の和歌集。春、夏、秋、冬、恋、雑の6つの部立で101首を収める。平安後期のもので、ゆるやかな筆致のかな文字が特徴的。
 
古写本とはいえ、歴史を感じさせる芸術的な文字の流麗なさまは、この国の文化が花開いた平安の世を今に伝えてくれている。和歌というのは、教養と文化の象徴でもあり、この素養は日々の鍛錬がないと伸びていかないだろう。芸術も、受け手に知識がないとどうにもならない。学ぶことの大事さを、改めて感じる。

【読了】中原淳+パーソル総合研究所「残業学」

今年59冊目読了。立教大学経営学部教授の筆者が、人と組織の持続的成長に資するソリューションを提供する研究所と共に「明日からどう働くか、どう働いてもらうのか」を提言する一冊。

〈お薦め対象〉
残業に疲弊するすべての人、組織のリーダーシップをとる立場の人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『なぜ、残業が減らないのか?』には「日本の職場特有である仕事の無限性・時間の無限性が青天井の残業を生む。日本人の仕事観に『努力信仰』があり、量をこなせない人は成長しないというバイアスがある。生活のために残業代が欠かせないと思っている人は、そうでない人より長く残業をする」。
『なぜ、今、残業を減らすべきなのか?』には「長時間労働の慣行を見直さないと、少子高齢化の日本では働き手を増やせない。個人に健康・学びのリスクを与えるだけでなく、残業はむしろ成長を阻害する。企業に採用・人材・イノベーションコンプライアンスのリスクをもたらす」。
『どうすれば残業を減らせるか?』には「他者からのフィードバックにより、こびりついた自らの知識・スキル・信念を捨てていく。短期的に効果を上げるために、残業時間を見える化し、コミットメントを高め、死の谷を乗り越え、結果も見える化して残業代を還元する。成果の定義を努力+成果から時間あたり成果へ、成長の定義を経験の量から経験の質へ変えていく」。

まとめるのが大変なくらい、非常に示唆に富んだ本だ。「なぜ、働き方改革が失敗するのか」というところへの言及も「施策のコピペの落とし穴、鶴の一声の落とし穴、お触書モデルの落とし穴」と非常に実体感としてもわかりやすく読み解いてくれる。パーソル総合研究所の豊富なデータも、中原先生の主張を力強く裏付けており、本当に参考になる。

「やらされムードは、根本的原因の放置で生まれる」「対話は、お互いの違いを顕在化するコミュニケーション」「大人の学びは、背伸び、振り返り、つながり」などの洞察もお見事。この本を読んで、ぜひ日本の残業を減らしていきたい、と思う。

それにしても。中原淳先生、本当に比喩がうまい。かつ、最新の(またはそれに近い)用語も積極的に取り入れて「これからの世代にわかりやすく」を心掛けている点も、非常に好感が持てる。超おすすめの一冊。

【簡単飯には、そうめん。】

今日は休み、息子は半日で帰ってくる。暑いし、手間なく済ませたいし…となると、これだな。

<昼食>
・梅しそツナそうめん
・卵とブロッコリー茎のスープ


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所要20分。そうめんの味付けは、梅干しとツナが主張するのを調和するために、しょうゆとごま油、だしを少々。スープは鶏がらの素でささっと。

家の昼食となると、こんなもんで十分だ。息子も「おいしい」と喜んでいたし、よかった。

【心震える意見交換。】

過日、学生時代の先輩と、意見交換した。そこから、感じたこと。

〈艱難、汝を玉にする。〉
卒業して20年以上。当然、順風満帆なわけもなく、むしろ谷あり谷あり。「なぜうまくいかないのか?」に悩み続けたことを話し合った(これとて、話せば簡単だが、当然そこに至る日々は本当に大変だったと推察申し上げる。事実、自分もそうだったし)。
しかし。その苦労があるからこそ、今の自分があるわけで、「苦労を乗り越えたものこそ、見える景色」という感覚。それは、やってみなければわからない。

〈今あるものを、大事にする。〉
人生、なかなか思い通りにはいかないもの。そんな時は「自分の人生には、あれが足りない、これが足りない」という気持ちを抱くことが多い。
もちろん、「足りない」を「挑戦」と捉え、「足りないからこそ、自らの努力によってそれを埋めていく(克服していく)」ということは非常に大事であり、それが成長であることは間違いない。
他方、「足りない」を「不満」と捉え「周りが悪い!!」としてしまうと、今ある大事なものすら見えなくなってしまう。

今、自分の手にあるものを大事にしながら、挑戦をし続ける。それこそが、自分の人生において成長し続ける、ということなのだろう。

引き続き、精進しよう。

【読了】一個人編集部「日本遺産を旅する」

今年58冊目読了。2015年度から始まった「日本遺産」の初回登録遺産18を紹介する一冊。

「そもそも、日本遺産って何だよ。世界遺産のパクりじゃねぇか」と思っていた。この本を読んでみると、「点在する文化財を一定のテーマの下で、面として一体的にPRする」という文化庁の狙いが理解できるし、どこもそれなりに興味はそそる。

…しかし。訪日外国人のために「2020年度までに100件程度登録する」「観光の受け皿となる日本遺産を、日本各地にバランスよく存在させる」など、「答えありき」感が否めないと共に、どうにも、どれもこれも教科書臭い感じがする。「あぁ、いかにも官製観光だなぁ…」というところ。21世紀にはどうなんだ?と思わざるを得ない(←観光地に罪はないが)。

歴史オタク、国宝マニアですらこう思うのだから、これが外国人観光客を引き寄せるとは到底思えない。マーケットインではなくプロダクトアウトの典型。

こりゃ、文化庁デービッド・アトキンソン「観光立国論」を読んで、目から鱗を落とさんといかんな。

【国宝】吉備津神社本殿及び拝殿

1425年、桁行正面5間、背面7間、梁間8間。檜皮葺の入母屋屋根に千鳥破風を2つ並べた、神社建築唯一の比翼入母屋造。本殿に続く拝殿は、正面1間、側面3間、棟高39尺で、切妻屋根檜皮葺。


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吉備津神社は、御祭神は大吉備津彦命。七代孝霊天皇の皇子として、吉備国を平定し、吉備の中山山嶺に葬られたという。その後、仁徳天皇が、吉備国行幸の際に大吉備津彦命の業績を聴かれ、ここに神殿を創建・奉斎されたと伝わる。940年には、三備(備前、備中、備後)一宮と称せられ、高い神威を持っていた。また、大吉備津彦命の伝承は、桃太郎のルーツともいわれる。

1390年に後光厳天皇の勅命により、足利義満が再建に着手。1425年に現在の社殿が落成した。この建築様式はここだけなので「吉備津造」とも称される。

広い敷地に、長い回廊。そこを登っていくと、少し開けた場所で独特な造りの本殿・拝殿を観ることができる。その規模感、そして特殊な様式。誰がどのように考えて、このような意匠としたのか。そのチャレンジングな精神を受け入れる鷹揚さを感じる。そういう心持ちこそ、今の時代に必要なのかもしれない。

【監査対応終了。】

2日間の本社による監査対応終了。いやぁ、ホントに気疲れした…そこから、感じたこと。

《ポイント》
●日頃の積み上げが大事。
監査準備でどれだけバタバタしても、限界がある。まずは、日々の業務。かつ、淡々とルール通りにこなすのではなく、疑問を確認し、潰しながら進めていく。結果として、その日々の業務姿勢が何よりの監査準備となる。

●「人間はミスをする」前提で見直す。
そうはいっても、やはりミスは避けられない。なので、直前の見直しは大事。この時「まぁ、大丈夫だろう」と思ってはいけない。まさにそう思いたくなるように、人間の脳はサボりたがりなのだ。そこに留意する必要がある。

《問題の所在》
●漫然と見て「見直した」気になる。
「なぜ」「何を」「どのように」見直すか。そこまで詰めて見直すことが大事。
しかし、往々にして、「見直した」とはいうものの、上記三点を曖昧にしたまま見て(≒眺めて)、そんな気になっているだけ、ということは散見される。

「きちんと」見る、「しっかり」見る。そんなコトバに惑わされず、上記三点を「詰めて」見る姿勢で業務に臨むことが求められる。

自戒の念を込めて。