世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】大平哲也「感情を"毒"にしないコツ」

今年61冊目読了。福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授の筆者が、心と体の免疫力を高める1日5分の習慣を提唱する一冊。


コロナ禍において、様々なストレスが加速度的に強くなっている。そんな中で、東日本大震災後の福島県での状況を踏まえた提言なので、納得性が高い。


心身の不調とストレスについては「『感情』が心だけでなく体の病気も招いている。逆に生活習慣病が『感情』に影響することもある」「病気や不調というのは、その人の『弱いところ』を突いてくる」「ストレスを感じると食べすぎてしまくのは、ストレスに対抗しようと分泌されるコルチゾールに食欲を増進させる作用があるから。加えて、コルチゾールには血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌調整を乱し、インスリンを過剰に分泌させてしまう働きもあるから」と述べる。


また、コロナ禍での問題点として「新型コロナウィルスで心配なのは、感染そのものによる影響に加え、不安による心や体への影響や見えないストレスがあること。今後、福島と同様に、不安を伴う『感情』の影響で、うつや生活習慣病などの病気が増えていく可能性は否定できない」と指摘するあたりは、全く共感できる。この状況は本当に異常すぎるし、それを『ニューノーマル』とか騒ぎ立てていた一部専門家とマスコミは本当にいかがなものかと思う。
マイナス要素として「問題は感情を"ためこむ"こと。ためこむことで、その感情は慢性化していく」「『怒り』や『不安』などの感情が長く続くと、やがて『うつ』になってしまう」「笑わない高齢者は、笑う高齢者に比べて介護が必要になるリスクが高くなる」というあたりの指摘も、なるほど納得だ。


ストレスをいなすための留意点「怒りを感じていても、高血圧や脳卒中にならない人は①趣味を持っている②怒り以外の感情(笑いなど)で発散する③話を聞いてくれる人がいる」「ストレス肥満を防ぐには①感情を抑えつけるのではなく、行動を変える②運動量を増やす」「性格を変えるのではなく、生活習慣を変えるほうがずっと簡単」「『笑え』というとハードルが高いが、面白くなくても形として笑えればあっ、ウソ笑いでもOK」のあたりは、理解できる。体感としてあっても、それを実践しないと意味ないよな…


具体的な対応方としての「人の話を聞かず、自分の好きなことばかり話す。一見、自分勝手なようだが、これがストレスをためない極意。そして大切なのは、相手が話している内容を理解することではなく、何かいいアドバイスをしてあげることでもなく、"話を聞いているという態度をとる"こと」「どんな小さなことでもよいので、生活のなかにポジティブなものを増やしていこう。それが、きっとストレスや不安とうまく付き合う自分をつくってくれる」「日常生活のルーティンによるストレスをいったんリセットするには、非日常的体験がおすすめ」は、やってみたいな、と思う。何かとストレスの多い2022年では、特にそうだ。
笑いについて「笑うことの効果は、単純に笑うこと自体が運動になること、脳内リセット効果があること」「笑顔をつくるよりも『声を出して笑う』のがコツ」というのも参考にしたい。


手法論はいろいろあるのかもしれないが、「アウシュヴィッツで生き抜いた人のキーワードは『希望』と『ユーモア』」は大事なカギになると思われる。サクッと読める新書なので、一読をお薦めしたい。