世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【国宝】宮内庁御物、国宝指定へ。

21年7月16日、文化財保護における革命的な転換があった。「文化審議会佐藤信会長)は16日、鎌倉時代の絵巻物「蒙古襲来絵詞」や安土桃山時代の画家、狩野永徳の「唐獅子図屏風」など、絵画4件と書跡1件を国宝に指定するよう文部科学相に答申した」というニュースだ。


単なる国宝指定の答申、というものではない。国宝指定される文化財は毎年あるので、それ自体はさして珍しくない。が、「宮内庁管理の美術品(正倉院宝物や書陵部管理品を含む)は、慣習的に文化財保護法による指定の枠外となっている」ことから、今回の答申は文化財保護の方針を大きく転換する中身なのだ。


もちろん、宝物である文化財自体の価値が変動するものではない。しかし、国宝指定となれば、話題になるし、展覧会の目玉として一般の眼に触れる機会も増えるだろう。これは、間違いなく日本の「文化レベル」向上に資する転換だ。
また、さらに考えれば、こうした一級品の文化財が多くの人の目に触れることで、当然、収入が上がる。経済を回すということではなく、その収入を「文化財保全」に使う(=職人の技術に相応する賃金を支払うことができる)ことに繋がる。それは、未来に向けた「文化財を引き継ぐ」という大事な役割を果たすことになっていくだろう。


このように、意義深い決定。まぁ、国宝マニアとしては、単純に「逸品を拝見する機会が増える」という喜ばしさもあるが、その意義をしっかりと踏まえて楽しみたいものである。