世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】砂原浩太朗「逆転の戦国史」

今年51冊目読了。フリーのライター、校正者である筆者が、織田信長明智光秀などについて俗説で言われていることを疑い、事実がどうであったかを追求する一冊。


「『天才』ではなかった信長、『叛臣』ではなかった光秀」というサブタイトルの通り、俗説のイメージを覆しにかかっている。…とはいえ、自分がとても楽しみに観ていたNHK大河ドラマ麒麟がくる」で出てきたような話ばかりであり、あまりびっくりはしなかった。


「信長がたびかさなる苦杯をなめながらもその都度しのぎ、勢力を伸ばしていったことのほうに驚嘆の思いをいだく。一見、天才性とは無縁と思える忍耐力や粘り強さを、彼は併せ持っていたのではないか。ひらめきと狂気だけで生き残っていけるような、たやすい時代ではなかった」としつつ、光秀については「人がいのちを投げ出すのは、きわめて個人的な動機によるのではないか」と、俗説に従っているのはどうなんだろうな、とは思うが…


しかし、歴史を見るうえでのポイントとして「フィクションからはなれて歴史的事件をあつかう場合、前提として同時代の史料にもとづくべき」「敗者はつねに愚かしく描かれがちであり、理不尽なまでにおとしめられる例が多い。歴史をひもとく際、このことはつねに念頭へ置きたい」「後代のわれわれはすでに結果を知っているが、渦中にある人々は、先の見えぬなか、つねにいのちがけの決断を強いられる。それでいてぶれないというのは、簡単なことではない」を挙げているのは、筆者の歴史愛を感じる。これは、歴史を好きな人間でないと理解できないフレーズだ。


大河ドラマ麒麟がくる」を見ていなければ、面白かったのだろうが、後なぞりのような感じを受け、本書はあまり楽しめなかった。


ともあれ、コロナ禍において「ひとは生まれる時を選べないという、あらがいがたい真理」という歴史に学ぶ真理は、非常に重い意味を持つ。それは本当にそうだよなぁと感じる。