世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】梨木果歩「西の魔女が死んだ」

今年54冊目読了。英国に留学し、児童文学を学んだ作家の筆者が、中学に進んでから学校に足が進まなくなった少女とその祖母との交流から、世界観・死生観が展開されていく小説。


小4の娘が「読みたい!」と図書館で借りてきたので、拝借して読んでみたところ、これがなかなか深い内容で驚かされる。アラフィフのオッサンが読んでなお、かなり興味深い人生訓・人生観が展開されている。


主人公は「感受性が強すぎるのね。どうせ、何かで傷ついたには違いないんだろうけど。昔から扱いにくい子だったわ。生きていきにくいタイプの子よね」と母親から言われるような子で、祖母との交流が実に自然豊かに生き生きと描かれていく。


ネタバレ回避のために、ストーリーは割愛するが、「魂は身体をもつことによってしか物事を体験できないし、体験によってしか、魂は成長できないんですよ。ですから、この世に生を受けるっていうのは魂にとっては願ってもないビッグチャンスというわけです。成長の機会が与えられたわけですから」「いちばん価値のあるもの、欲しいものは、いちばん難しい試練を乗り越えないと得られないものかもしれませんよ」というおばあちゃんからの言葉には強く賛同するし、「精神力っていうのは、正しい方向をきちんとキャッチするアンテナをしっかりと立てて、身体と心がそれをしっかり受け止めるっていう感じですね」は、体感としてなるほど理解できる。


また、運命論的な視点にはなるものの「人の運命っていろんな伏線で織りなされていくもの」「誤解は人生を彩る」のあたりは、なるほど経験上納得できる。こういうことは、確かに10代くらいで『知識として』頭に入れておけば、そのあとの人生の味わい方が変わるのだろうな。


この生きにくい現代をどう生きていくか。「ある秩序の支配している社会では、その秩序の枠にはまらない力は排斥される運命にあった」ということを理解したうえで「自分の直観を大事にしなければなりません。でも、その直観に取りつかれてはなりません。そうなると、それはもう、激しい思い込み、妄想となって、その人自身を支配してしまうのです。直観は直観として、心のどこかにしまっておきなさい。そのうち、それが真実であるかどうか分かるときがくるでしょう。そして、そういう経験を幾度となくするうちに、本当の直観を受けたときの感じを体得するでしょう」というレベルに到達したい。


児童文学ではあるものの、大人が読んでも十分に楽しめる、深い一冊だ。一読をお薦めしたい。