世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】橘玲「女と男」

今年42冊目読了。ベストセラー作家の筆者が、女と男がなぜ分かり合えないのかについて、最前線の研究を紹介する一冊。


いろいろとデータは紹介しているものの、二次資料でしかなく、どうにも信憑性が薄い、というのが正直なところ。ライトに、ややショッキングに扱っているので、読みやすさを感じる人は多いのだろうが、これってどうなんだろうか?という気持ちにならざるを得ない。


とはいえ、「性の基本は女である。それにもかかわらず、これまでの心理学がずっと男を基本としてきた」としつつ、自分の見解として「男と女は生物学的にちがっているが、平等の権利を持っている。多様性を無視し、『同じ』でなければ人権は与えられないという考え方が差別的」と述べている点については好意が持てる(筆者は男性)。


男女の好みとして「40才を過ぎると女の関心は年下の男に移る」「男は5歳刻みで口説く男を変える」などは、直感的にはそうだろうな、と思う。が、一般化しすぎのようにも感じる。


いろいろと疑問を呈したくなるようなことも多いが、「進化論的には、男は『競争する性』、女は『選択する性』として『設計』された」「子どもが生まれても『狂おしい恋の嵐』に翻弄されていたら、子育てなどできるはずがない。恋の情熱は半年程度で冷めるように『設計』されているのだ」「男女の『友情』にはひとつ条件がある。その男が、もっと魅力的な女と性愛関係にあることだ。その関係が破たんし、ほかに性愛の対象となる女性がいなければ、友情はたちまち欲望へと変わるだろう」「男にはたいして魅力的ではない『やせること』への過剰な意識は、女性コミュニティの価値観(同調圧力)によって生まれるのではないだろうか」などは、なるほどと感じる。


また、「男はより大きな報酬を求めて、プレッシャーのかかる状況でも積極的にリスクを取りにいく。だがアナウンサーやレポーターなど、プレッシャーがかかる状況で言語的タスクをこなさなければならない仕事では、女性も互角以上に能力を発揮できる」「『二次元美少女』は眼の縦横比が逆で、あり得ないほど瞳が大きく、口は逆にあり得ないほど小さく、鼻に至っては存在そのものが抹消されかけている。ここまで現実とかけ離れているとグロテスクに感じるはずだが、なぜ魅力的なのだろうか。それは、人間が生得的に『かわいい』と感じる顔の特徴を強調しているからだ」のあたりは、なんとなく納得性が高い。


全体的に、『びっくりさせてやろう』という意図が強すぎるように感じる。図書館で、かなり借りるのを待たされたが、それだけの本なのだろうか?という気がする。問題提起としては、アリなのかもしれないが…