世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ジェニファー・ライト「世界史を変えた13の病」

今年40冊目読了。ニューヨーク在住にして、「ヴォーグ」「ニューヨーカー」等の雑誌への寄稿をしている作家である筆者が、過去の疫病とそれがもたらした影響を描き出す一冊。


2021年というコロナ禍において、何らかの参考になるかな、と思って手に取ったのだが、どうにもアメリカンジョークが多く、読んでいてイライラする。でも、その点さえこらえられれば、なかなか言っていることには納得できる。


疫病がもたらす状況「不安定で怖ろしい時代こそ、人々はより現実逃避できる娯楽を求める」「致命的な病気への恐怖と科学的知識の欠如、そして、人々の恐怖につけこむ一部の人間の悪しき傾向が、今日では滑稽に思える予防策をもたらした」は、まさにコロナ禍だからこそ切実に感じる。


疫病下での一般則「国が混乱状態にあるとき、愛される立派な指導者がいることが、望み得る最良の状況である」「嘘をつくほうが楽なとき-政府に嘘をつくことを望まれているときでさえ真実を伝える。それがジャーナリズムの最高の目標である」は、今の日本を見ると忸怩たる思いだ…そして「カリスマ的な民衆煽動家が高く評価され、信用されたのは、事実を調査することや、入念な下調べをした退屈な医者の話を聞くことが大変で時間がかかるからだ」は、警句として受け止めたい。


ジョン・ケリーの言葉「疫病において、恐怖は人間関係の溶剤として働く。すべての人を敵にし、孤立させる。すべての人が島になる-疑念や恐怖、絶望に取りつかれた小さな島」は、現代のコロナ禍にも適合する見事な洞察だ。
そして、「治療法が見つかっていない病気に感染した人を侮辱するのは、現代でもよくあることだ。ひとつには、その人達は自分とは違うと思いたいからだ。その人たちはどうにかして自ら病気を招いたと思いたいのだ。だが、病気に考えはなく、賢明にも世界の悪人を選んで殺したりしない」「人類共通の恐怖は、ひとりで死ぬことだと思う」という心理は、的を射ているなぁと思う。


では、このような苦しい疫病下においてはどうすべきか。「重要なのは、第一に、共存することを学ぶこと。第二に、互いの最良の部分を引き出すよう努力することだ」「ほとんどなんに関しても、世界的な物の見方を個人で変えることができる」「心配することは有益だ。楽しくないし、夜眠れないかもしれないが、それはつまり、悩んで問題を解決する能力があるということ。共感力のある大人の人間ということだ」「人間同士ではなく、疫病と闘えば、わたしたちは病気を打ち負かすだけでなく、その過程で人間性を保てるだろう。前へ、上へ進もう」のあたりの記述は、まさにコロナ禍においては勇気づけられる。歴史上、人類は何度も疫病に苦しんできたが、そこを生き延びて今がある。その過去に学ぶことは大事だろう。


疫病とは関係ないが「最高の仕事は”しなければならないこと”をうるさく要求するのではなく、不変の法則の根気強い研究によって成し遂げられる」という記述は、なかなか心に響いた。