世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】吉海直人「世界でいちばん素敵な百人一首の教室」

今年29冊目読了。同志社女子大学表現文化学部日本語日本文学科教授にして、公益財団法人小倉百人一首文化財団理事の筆者が、写真ビジュアルを交えて百人一首の世界をわかりやすく紹介する一冊。


「世界でいちばん素敵な教室」シリーズもので、装丁がしっかりしているため、イメージをつかみながら百人一首を覚えるのに非常に役立った。個別の知識の掘り下げ、歌が詠まれた背景の詳細な描写などは谷知子「百人一首(全)」に遠く及ばないが、完全に入門者に対象を寄せ込んでいる本なので、むしろこのくらいでちょうどいい。「百首の歌、百人の人生に秘められた物語を写真と共に紹介する」というスタンスは、単純にかるたを覚える苦労からおおいに救ってくれた。


誰もがその名を聞いたことがある、百人一首。「しかし、それぞれの歌がつくられた背景や詠み人たちの想い、選者の意図などを私たちは十分に理解しているのでしょうか」「この本を閉じたとき、いつか聞いたあの歌がより鮮明で味わい深いものとなって、あなたの心に残ることを祈っています」というとおり、この本をめくりながら暗記する手助けに使わせてもらった。


「もし興味のある和歌や歌人を見つけたら、ほかの文献を読んだり、ゆかりの地を訪ねたりして、より理解を深めてみてください。本書が、そんな『百人一首』を巡る旅のきっかけとなれば、こんなにうれしいことはありません」との結びの言葉どおり、そういう気持ちにさせてくれる本。読み込むような深みはないものの、入門書として「さらりと読みながら、イメージで覚える」というレベルの人にはもってこいだ(←自分がそうだったので)。少なくとも、かるたやアプリと睨めっこして覚えるよりは、よほど広がりがあって楽しく覚えられる。


百人一首を覚える、そしてその後もライトに楽しむにはとてもて適した一冊だ。