世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【百人一首を覚えてみて】

小4の娘に促されるままに、全く興味がなかった百人一首を覚えてみた(もともと覚えていたのは2首のみで、98首が手つかずからのスタートだった…)。かなり手こずったし、まだ「ひととおり『覚える作業』を完了した」だけであって、完璧に覚えた、というには程遠いのだが、やってみて良かったな、という感じだ。


百人一首を覚えるということ>
●先人たちの人生から、大きな学びを得られる
 100首もあると、あれやこれやが歌われている。そして、人の心の機微に触れる歌が厳選されているので、当然、数々の人生訓が含まれている。
 古より、人間は同じようなことを迷い、悩み、憂いてきた。その先人たちの人生を追体験することが、わずか31文字でできるのだ(尤も、百首だから三千百字か…)。ある歌に共感し、ある歌に涙し、ある歌に勇気づけられる。そんな芸術作品だ。


●日本の四季の美しさを体感できる
 有名な歌人たちが、日本の四季を美しく歌いあげているものが幾つもある。その情景を思い浮かべるだけで、日本の自然の豊かさ、素晴らしさを心の中で味わうことができる。コロナ禍の2021年、ステイホームしながらそんな楽しみがあるのか、と感じた。


●日本語の美しさに「身体で触れる」ことができる
 これは暗唱の効果。百人一首は古語で歌われているため、非常に覚えづらい。しかし、いったん覚えてしまうと、その響きの美しさ、言葉と音の絶妙なハーモニーを楽しむことができる。しかも、それを「体感」する。これは、AIには絶対にできない豊かな楽しみだ。


<アラフィフになって「暗記に挑戦する」ということ>
●まるごと覚えるのは不可能。
 挑戦してみて、自分の暗記力の低下ぶりに愕然とした。とにかく、頭に入ってこないのだ。それを尻目にスルスルと丸ごと覚えていく娘を見ていると、情けなくなる。
 とはいえ、同じ土俵で勝負できない以上、やり方を変えるしかない。「エピソード記憶」に頼り、歌のストーリーとともに覚えていく、そして情景を思い浮かべながら暗唱する。それを地道に繰り返すことで、牛歩のごとく進んでいった、というところ。


●それでも、暗記には意味がある。
 「検索ができれば、暗記なんて必要ない」という声もある。しかし、やってみて思った。「とっかかりだけでも覚えて(=自分の脳に入って)いないと、検索は絶対にできない」のだ。「百人一首」というデータベースが頭の中にインプットされているからこそ、検索できる(≒引き出すことの出来る)知識が出てくる。まっさらな状態では、到底手も届かないような情報がいくらでもある。
 暗記、それはそれなりに労力がかかり、効率的ではないかもしれない。しかし、人間は脳の中で「持っている知識を組み合わせる」ことしかできない。持ち合わせの駒が少なければ、そのぶん、発想力が制約される。やはり、暗記は必要であり、意味のあることだと感じた。

 


 やってみて思ったのは「百人一首は、子供のうちに丸ごと暗唱できるようになっておき、そのあと、成長する中で歌に込められた思いやメッセージを体感していくことで、人生に役立てるのがベストな教養。ただし、大人になってからでも十分に覚える意義はある」ということ。


 そして、何事も「やってみないとわからない」と、強く感じた。新しい挑戦を続けられるかどうか。東京オリンピックに関してあれやこれや「老害」の話が出てきているが、「自分が遥かなる過去に体感してきた枠」を抜け出すことができるか否か、ということに尽きるような気がする。


 過去に囚われないためにも、新たな体感を得ることで、自らの「枠」を拡げていきたい。