世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】黒田真行「40歳からの転職格差」

今年128冊目読了。ルーセントドアーズ株式会社代表取締役にして、ミドル世代専門転職コンサルタントの筆者が、転職にまだ間に合う人、もう手遅れな人の特徴と、どうミドル転職に向き合うべきかを解説する一冊。


ミドル転職を取り巻く環境については「人口減少や少子高齢化、長寿化、共働きの増加、介護や育児など、ミドル転職の理由はいろいろ」とした上で「エリア格差、業種格差、職種格差がある」「需要と供給はバラバラ。即戦力として実績のあるミドルビジネス漫画が大都市で余っている一方、地方では幹部候補を見つけられない優良企業が数多く存在している」「20代、30代の若い人たちの需要が圧倒的多数なのは変わっておらず、『あまりにも採用が難しい職種だけは年齢基準をあげてみようか』というのが企業側のホンネ」「転職を繰り返す人に対しては厳しい目が向けられている」「転職市場は、35歳、40歳、45歳、50歳、55歳と5歳刻みで求人数が半減を繰り返す」「何でもできますと言う人ほど、何もできないというのが、多くの採用担当者の失敗体験であり認識」とその現実を突き付けてくる。


転職に挑むための準備としては「表層的な条件にこだわるのか、仕事の中身や自分のやりたいことにこだわるのか」「『こういう仕事がしたい』『こんな自分になりたい』という目標がないと、ただ過去を売るだけの人になってしまう」「自分の心が満たされることは何なのか。自分がいかに機嫌よく働き続けられるかということも転職では大事なこと」「ポータブルスキルは、『仕事のし方』と『人とのかかわり方』の2つに大きく分かれる」「スキルの抽象度を上げることで、汎用性を広げる」などをあげる。


実際に転職に挑む際のポイントは「キャリアの棚卸し。①『したこと』だけでなく『学んだこと』②『成果』だけでなく『プロセス』③『マネジメント実績』だけでなく『マネジメントの型』」「企業が確かめたいのは『成果の再現性』」「自己PRは『求人の目的』から逆算する」「転職理由はポジティブで前向きに」とし、実際に入社してから活躍するために「確認すべきポイントは『環境』『ミッションと権限』『達成基準と評価基準』」「入社後の心得は『カルチャーフィット』『焦らない』『同士の獲得』」と述べる。


もっと根本的な仕事観においても「人生の折り返し地点にいる現在、自分を客観的に見つめ直し、捨て去るべき価値観は捨て、何を大事にするのか、新しい価値観を自ら作り出すことが大切」「先祖代々、そして自分の親から引き継いで、もって生まれてきた自分の能力を、最大限生かし切って、世の中のため、身近な人のため、自分自身のために働けたかどうか?」と述べ、示唆に富む。


転職に際する忠告として「人は、自分に都合のいい情報はすぐに信用しやすいが、自分に都合の悪い情報は、それが事実であったとしても自分で体験しないと簡単には納得できない生き物」「こと転職に関してはやり直しがきかないということもあって、楽観的に考えて失敗するよりも、心配しすぎて杞憂に終わったと思っていただくくらいでちょうどいい」をあげるのも、良くわかる気がする。


それ以外に興味深かったのは「人々を苦痛から解放してくれるような技術は実現しており、そうではない単なる希望や夢の技術は実現していなかった」という指摘。なるほどなぁと納得した。


マーケットの現状や手法論だけでなく、仕事哲学にも斬り込むなど、新書ながら非常に深い内容。転職を考えていてもいなくても、一読の価値ありだ。