世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】小飼弾「本を読んだら、自分を読め」

今年125冊目読了。ブロガー、プログラマー、投資家である筆者が、年間100万ページを血肉にする「読自」の技術を紹介する一冊。


本を読む効用としては「本を読むということは、自分を変えるための①場所を変える②時間の使い方を変える③誰と付き合うかを変える、のすべてに該当する行為」「本は勝手に人を救う。本とは、海で溺れたとき、波間に浮いている丸太のようなもの。それにつかまって必死で浮いていれば、助かる。でも丸太に『人を助けよう』という意志があるわけではない」「大人の仕事の能力とは、いかに適切に引用できるかにかかっている。そのためには、ある程度以上の読書量が絶対に必要不可欠」「自分で何かを発言できるようになる」などをのべている。


本と向き合うときに意識すべきこととしては「読書は受け身の行為だと誤解している人が多いが、自分で自分を救うしくみを構築するには、自分が主体であるという強い意識が不可欠」「ベストセラーに読まれないためにいちばんいいのは、ブームが去ったころに読むこと」「全然知らない世界の本と知り合うためには、リアル書店をぶらぶら歩いて探すのがいちばんいい」「もしその人のすごさを知りたかったら、自伝ではなく、第三者の手による伝記を買うべき」「自己啓発書を読む暇があったら、もっと伝記を読みなさいといいたい。歴史の評価を下された、『本当の成功者』の人生を知れといいたい」「いろいろなジャンルの本を幅広く読んでいると、自分の知識が蓄積されるとともに、ふとしたときにそれがリンクする瞬間がある。その面白さに目覚めると、読書量は加速度的に増えていく」が挙げられている。このへんは、自分が至らぬながら本を読み込んできた体感としても、非常にフィットする感がある。


現代を生きる上では「自分で情報を集め、それをもとに考えることができる力は、これからの時代を生き抜くためには絶対に必要」「人間は自分の器におさまる発想しかできない。大きな発想ができるようになりたかったら、器を広げるしかない。脳のリミッターをはずして思考するための訓練は、空想することしかない」「若者から学べない年寄りは、本当に格好悪いもの」が留意点として述べられる。


その他にも「テレビばかり見ている人は、楽をすることでかえって本当の楽から遠ざかっていることに気がついていない」「一人立ちできるということは、先生や師匠、親方が間違った時に『親方、やはりそれはおかしい』といえるかどうかにかかっている」「何かがおかしいと感じることがあったら、声を大にしていえなければいけない。ただし批判するなら、必ず代替案もセットで用意すべき」「モノも思考も、固定させてはいけない。本や知識は循環させることが大事」「教養を積んでいくということは、自分にとってどれだけ良質の偏見を得られるかというゲーム。教養がないうちほど、量を目指す」「社会人として、いちばん日本語能力を問われるのは、報告書を書くとき」など、多様な納得性の高い発言をしており、やはりこれも分厚い読書のなせる業か、と唸らざるを得ない。


筆者の論旨は「本は、きみを救ってはくれない。けれども、本を読むことで、自分を救える自分になれる」「本が鏡になって今の等身大の自分を照らしてくれる。情報量が足りない部分は、自分の経験なり、記憶なり、想像力なりで補ってやらなければならない。だからこそ自分がわかる」に尽きるわけだが、視点をうまく転換していて、わかりやすく読み解いてくれている。上段から説教じみた言葉で『本を読め』と言われても…ではあるが、これなら、読もうという気になるのではないか。


改めて、読書の意義を考えさせてくれる。読みやすいし、身構える必要がないので、読書にあまり興味がない人ほどいいかも。