世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】上田信行「プレイフル・シンキング」

今年117冊目読了。同志社女子大学現代社会学部現代こども学科教授にして、ネオミュージアム館長の筆者が、仕事を楽しくする思考法を提言する一冊。


非常にわかりやすい筆致で、さらりと読むことができる。…が。キャロル・S・ドゥエックに師事したとのことで、ドゥエック「やればできるの法則」を焼き直しした本、という感覚は否めない。


彼の提言する「プレイフル」とは、「物事に対してワクワクドキドキする心の状態のことをいう。どんな状況であっても、自分とその場にいる人やモノを最大限に活かして、新しい意味を創り出そうとする姿勢」「心のゲージを自由にコントロールして、環境や状況に対して適応的に振る舞えること」と定義し、プレイフルに働くとは「①真剣に向き合う事②柔軟であること③協調のためのエンジン④実現できそうな予感にワクワクする」こと、と述べる。そして、プロフェッショナルとは「物事に積極的にかかわろうとする知的好奇心にあふれる部分と、それを俯瞰してながめるもうひとりの冷静な自分をもつこと。その両輪をうまくまわしながら革新を生み出すこと」と提言する。


「人がプレイフルであることを阻害しているのは、自分が変わっていけるという予感をあまりもつことができない、硬直した心のあり方」と述べ、「『世界とはこういうものだ』とあなたが感じている世界は、見方を変えればいくらでも違った世界に見えてくる。つまり、あなたの認識によって世界を作り変えることができる」と断じる。これについては、非常に共感できる。


学びについては「人生を楽しく豊かにしてくれる1番の経験」「『実践する』⇄『振り返る』というプロセスを繰り返しながら、人は学んでいく」と読み解いてくれる。


「すべては状況の中にある」「あなたが動けば状況は必ず変わる」「僕たちが失敗と名付けているものは、じつはある時点での現象に過ぎない」「あなたが潜在能力を充分な発揮できるのは、可能性をもった存在としてあなた自身を認識したとき。だから、他者に厳しく評価されたときは、それを卑屈に思うのではなく、自分の現状認識を上方修正するきっかけにしたい」「省察によって抽象化、構造化された経験は、ある特定の状況だけでなく、他の状況で応用することができる」のあたりは意義深い指摘であり、非常に共感できる。


だが、やはり順番違いということなんだろうな。本書を読んでから、ドゥエック「やればできるの法則」に進むべき、と感じる。