世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】伊藤守「図解コーチング・マネジメント」

今年111冊目読了。株式会社コーチ・エイおよび株式会社コーチ・トゥエンティワン代表取締役社長の筆者が、人と組織のハイパフォーマンスをつくるコーチングの入門書、要点整理ノートとしてまとめた一冊。


コーチングは、仕事で少しかじったことがあるのだが、全体像を学んだことはなかったので、復習と全体像理解のために読んでみたが、確かにイラスト入りで説明されており、非常にわかりやすい。


コーチングとは「ビジネスやパーソナルな目標達成の分野において、頭で分かっていることと行動との間に横たわる深い溝を、双方向のコミュニケーションによって埋めていく試み」と定義したうえで、


コミュニケーションについては「教える側にとっては当然のことであっても、習う側にしてみれば理解できない場合がある」と難しさを指摘したうえで「人と人との関係においては、どこまでいっても一対一が基本」とし、「実際に話を聞いてほしいと思っている人の望みは、ただ『私の話を聞いてほしい』ということだけ」であることを踏まえて「聞くべきことは、リクエスト、提案、質問の3つが基本である」と述べる。
そのうえで、コーチの質問の目的を「①選択の幅を広げるため②リソースを見つけるため③ビジュアル化するため」と定義し、クリエイティブ・リスニングのために「①時間をとること②相手を尊重すること③話しやすい環境をつくること④さえぎらず最後まで聞くこと⑤判断しないこと⑥自分が理解しているかどうか、ときどき確認すること⑦客観的になる事⑧肯定的なノンバーバル・メッセージを出すこと⑨沈黙を大切にすること⑩コミットメント」が知っておくべきポイントであるとする。


人間の行動特性については「人が目標達成に向けて行動し続けるには、たったひとりで目標に挑むというイメージから自由になって、自分には十分なリソースや協力体制があるという実感が必要」「人は基本的に、誰かのリクエストに応えて行動を起こすもの。実際には、勇気と自己信頼、他者への信頼があるからこそ、お願いしたり要望したりできるもの」と触れている。


そして、自分のOSをバージョンアップし続けるためのガイドラインとして「常に見直す。①地図は現地ではない②『いつも、絶対、必ず』はない③誰かにできていることは、私にもできる。私にできていることは、誰にでもできる④一歩横へ」を挙げる。


面白いと思ったのは「言葉はビークル(乗り物)。言葉には、話している人が伝えたいと思っている情報や要望、質問が乗っている。ところが、聞き手が受け取る過程で内容をゆがめてしまうことが多々ある」ということ。これは、本当にそのとおりだと思うし、このメタファーはうまいと感じる。


大意には賛同できる。しかし、この手の分析・研究が進んだ結果、リーダーシップや組織開発の観点からすると、コーチングは「ゴールではなく、初歩の初歩。時々チェックする必要はあるが、深く学ぶ時間は取れない(それよりも、リーダーシップや組織開発を学び、実践するほうが、複雑化する世の中においては遥かに大事)」というように感じる。まさに、筆者が触れているとおり「自分のOSをバージョンアップし続ける」ことが大事であり、そのためにはコーチングをがっつり学ぶというのは2020年の段階においてはもう遅い、というのが素直な感想。頭の整理で流し読むならともかく、それ以外ではお薦めできるか?というところだ。