世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】松野恵介「ぼくらはお金で何を買っているのか。」

今年106冊目読了。一般社団法人コトマーケティング代表理事の筆者が、モノが高く売れない時代のコトマーケティング全戦略を、実話に基づいた小説にして書き著した一冊。


実話をベースにしているため、無意味な作り物感がなく、それでいて読みやすく、わかりやすい。これはシンプルながらも良書だ。


うまくいっている企業の法則として「例外なく、自己紹介・自己表現がうまい」「未来を創っていくための方向性として、言葉を紡いでいく。その言葉に沿って覚悟を持って動くことで、会社は劇的に変わってくる。キーワードは『独自化』『共有』『覚悟』」「いいモノを作っても、売れへんかったらしゃあない。売れるためにはお客さんのことを知らなあかん」ということを見て取る。


お客様の特性としては「その商品を買うと、どんないいコト(体験)があるのか?あなたの会社と付き合うと、どんないいコト(体験)があるのか?お客様は、その2点を知りたがっている」「お客さんはな、誰一人として『売られたい』と思ってないねん」「このモノを買うと、こんなコトができる、という未来を示してあげる。それが、お客さんが商品を買う『理由』になる」とする。


どのような考え方を持つべきか、については「お客様のことをよく知り、よく見て、どんなコトに興味があるのか、どんな不安や不便を感じているのかをよく考える」「お客様の役に立つという視点で、コンテンツ力と発信力を磨くことで、結果的に商品も売れていく」「販促を通してお客様と会話をする」を強く薦める。


筆者が強く薦める独自化コピーについては「会社がこれまで歩んできたプロセスを見直しながら、『一番喜ばせたいお客様はだれなのか?』を想像して、そのお客様に自分たちができるコトを言葉にする。こうやってできた独自化コピーは、顧客へのアピールであると同時に、自分たちの会社の価値を再発見・再認識する言葉でもある」「独自化コピーを作るメリットは、大きく3つある。1つ目は、お客さんに興味を持ってもらいやすくなる。2つ目は、自社の進む方向性が明確になる。そして3つ目は、販促で売り込まなくてもよくなる」「社内外の人が、ぱっと見てわかりやすい、それで、すぐに行動に移せるようなコピーが大事」と述べる。


POP作りのコツとしては「①ターゲットに呼びかける②お客様の声をそのまま使う③具体的な数字を使う④自分が好きな理由を書く⑤知らないことを教えてあげる」「お客様に役立つ情報を書く、ということを意識する。商品の紹介にこだわらない。お客様は、商品という『モノ』は欲しくない。この店に来たら、どんな体験ができるかをアピールする」あたりを挙げる。


とはいえ、やってみるのはなかなかハードルが高い。ゆえに、筆者は「知るとできるの間には、やってみるが必要不可欠。その場合、手軽、失敗ができる、が大きなポイントになる」「改革と簡単にいっても、何かを変えて新しいことを始めるのは、今まで頑張って会社を支えてきた人たちにとっては、自分らのやってきた仕事が、否定されたような気持になるもんなんや。そうした人たちのことも無視できんやろ。だから、回りくどくても、みんなが納得できるように、一歩ずつ進めなあかん」と述べている。
そして「皮肉なことに、競合相手との差別化ばかり考えていると、どんどん競合相手と似てくる。競合相手をずっと見て、相手との小さな差異を作ろうとする。しかし、そんな小さな差異は、お客様にとってほとんど意味がない」「自分たちのことを分かってもらおうとするより、自分たちが思い描くカタチを創ったほうが早い」は、なんとなくそうだろうなぁ、と感じる。


同じようなことをいろいろな切り口から繰り返し述べている、ということが、読み進めていってよくわかる。さらっと読めるし、営業、販売促進に関わっている人は読んでおいて損はないだろう。