世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】隠岐さや香「文系と理系はなぜ分かれたのか」

今年103冊目読了。名古屋大学大学院経済学研究科教授の筆者が、文系・理系論争の経緯と現状について詳らかにする一冊。


正直、物凄くかったるい。つらつら事実の羅列が長いし、まとめはないし、筆者の性格なのだろうが、予断を排除するためなのか今後の見通しはほぼ曖昧に終わらせている。口述ならともかく、テキストとして読むと徒労感ばかりが残る…


学問分類の経緯として「大学が定着した12世紀頃のヨーロッパでは、上級学部は神学、医学、法学。下級学部は文法、修辞学、論理学及び弁証準、算術、幾何学、音楽、天文学」「歴史の中で諸分野のカテゴリーが定着していった順番は、自然科学・工学、社会科学、人文科学」と述べる。そして、ヨーロッパならではの特情として、神との対峙があった、とする。


理工系が確立した経緯については「ゼミナールと、学生実験を主体とした実験教育制度」「技術者教育は高等専門学校の枠組みで行われ、理論的な大学の教育・研究とは別のものという扱いが続いた」「結局のところ、世界で初めて総合大学に工学部を開設したのは日本の帝国大学で、1886年のこと。近代化を急激に進めようとする日本では、工学に関心が高く、旧士族を中心に学生を集めた。また、中世以降続く大学組織はなかったため、工学を蔑視する発想もなかった」と紐解くとともに「文系と理系という枠組みは、未来永劫存在するわけではないはずで、19世紀以降、自然科学とそれ以外のものを分類するために用いられた様々な考え方の一つでしかない」と述べる。


東洋と西洋の違いについては「欧米諸国では受験のときに、文系・理系の二つではなく、人文・社会・理工医の三つ、あるいはそれ以上に分かれるのが普通」「古代中国の知的文化において重視されたのは、生きるための思想あるいは原理である『道』を追求すること。そのための教養とみなされたのが、儒教道教のような人間にとっての規範を説く分野およびそのために必要な歴史知識であり、『学』と呼ばれた。それに対して天文学や数学、医学、農学、戦術・兵法などの『術』は特定の専門家だけが学ぶものとされ、低い扱いだった」とみる。


性差については「日本は理工系に女性が少ない一方で、市場に結びつきづらい分野である人文科学系、あるいは伝統的に女性が担う傾向のあったケアの領域に、とりわけ女性が多い国」「社会の中で共有されるジェンダー観が、無意識のバイアスとなり、それぞれのジェンダーに典型的ではない職業に就いた人に不利な働きをすることがある」と指摘する。


学問の歴史については「学問の分類を大きく変えてきたのは、人間が扱える情報の増大と、学問に参入できる人の増加」とし「分けて考えないと情報量が多すぎるが、分けてしまうと元の姿がわからなくなる。要素への還元と、全体性の理解とは両立が難しい」とする。


新書なのに、とても読みづらい。上記の内容を押さえておけば、わざわざ読む必要はない、と感じた…