世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】西成活裕「とんでもなく役に立つ数学」

今年78冊目読了。数理物理学、渋滞学を専門とする東大先端科学技術研究センター教授の筆者が、私たちの生活をより良くする「生きた数学」を高校生たちに語った一冊。


ゴリゴリ文系の読み手でも、安心して楽しく読めるのは、筆者の実力だろう。「文系こそ、経済や統計などで数学を多岐にわたって使うので、これからますます数学は大事」という言葉が胸に刺さる…


数学的思考として「はじめに、まったく記号や公式を使わずに、なぜか?と骨格になる部分を考えることが、論理と直観を養うことになるし、大きなイメージをつかむための力になるはず」「時間をゆっくり動かし、ほんのちょっとの変化を取り出して、それを気長に細かく分け、変化に関係している要因を割り出すのが微分。そして、そのちょっとの変化、前のコマと次のコマとの差を気長に積み重ねていくのが積分」「相互関係が強くなってくると、非線形性も強くなり、カオスが起こりやすい」「ちょっと線をずらしてみるとか、正確に近そうなところから工夫する。これがブレイクスルーが起こる一歩」「問題解決の際は、①対象を絞り込む②仮定する③問題点を定量化する」など、とても勉強になる。


結構、人間特性にも詳しい。「ちょっと我慢して譲りあったほうが全体がスムーズに流れる」「人間の素晴らしいところは、細かい部分に気を取られないで、大まかに本質を捉えられること」「人間はパニックになると判断力が低下し、目に見える物を追っていこうとする」「映像が浮かぶと、人はだいたい説得されてしまう」などは、心理学者のようだ。


「10問解くより1問作るほうがはるかに多くのものが身につく」「あの手この手で解こうとする、そのトレーニングが思考力になる」「いつまでに役立つのか、という期間を設定しないと、無駄かどうかは決められない」あたりは、数学のみならず一般的に役に立つ。


これだけ読みやすい本なら、数学でも受け入れられる。苦手意識が強い文系人間こそ、読むことをお勧めしたい。