世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】吉原英樹「バカなとなるほど」

今年67冊目読了。神戸大学名誉教授の著者が、企業研究に基づいて発見した経営成功の決め手について述べた一冊。


ネタとなる企業はバブル期の原稿であるため、女性活用や海外進出など、違和感がある。しかし、その軸となる主張「成功している企業の多くが、一見して非合理だが、よくよく見ると合理的な戦略を実行している」は、今なお新鮮なインパクトがある。


タイトルの意図として「成功するには、差別性と合理性。バカな、といわれるくらい他社と違う戦略と、なるほどと納得できること」「他社が軽蔑し、バカにする戦略の場合は、実際に成功するのをみてからでないと、他社はまねをして参入してこない。その間に、創業者利益をあげることができる」と説明する。


失敗する道としては「自分都合主義と保守主義のべき論の立場から議論していては時代の流れに乗れず、敗れ去る運命にある」「組織慣性を生む一つの要因は、忠誠心ないし一体感。人間はあることにある期間従事すると、そのうちにそのものに一体感を抱くようになり、そのものを変えられることに抵抗するようになる」「一社独占の状態が長く続く成熟商品の場合、独占の慣れから品質向上は緩慢で、サービスも悪く、価格も高位安定にあることが多いので、ユーザーひ不満が鬱積し、新規参入を待望する気運が生まれる」と言及する。


また、戦略を考える際に留意すべきこととして「新しい戦略を打ち出したとき、他社からバカよばわりされたり、軽蔑されたら、内心、しめたと思っていただきたい」「落差利用の戦略発想法の一つは、外国と日本のあいだの差に注目する」「まず何よりも外への関心をもちつづける」「先見力を強めるため、べき論にたたずに予測論になって世の中の変化、時代の流れを読む努力をする」「戦略の伝達方法は、口頭、文書、人事、予算、組織、日常の言動」と述べる。


陳腐な部分を捨て、メッセージの趣旨を拾えば、なかなかの良書。「情報は情けに報いてくれるもの、つまり、人間的、心理的、情緒的なもの」「継続は悪、変化は善」「他人に頼っていては勉強にならない。自分でやってみてはじめて身につく。できるだけ多く、かつ早くさまざまなことを経験してみる」は、今後留意していきたい。