世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】瀧本哲史「武器としての決断思考」

今年66冊目読了。京都大学客員教授、エンジェル投資家の筆者が、学生に教えた意思決定の授業を本に凝縮した一冊。


読書会で勧められたので読んでみたが、まぁ整理されていてわかりやすい。楽しみながら読み進めることができた。


変化の21世紀を生きるために「自分にとって必要な学問は何かと考え、探し、選びとる」「武器は使ってこそ。教養も、座学ではなく、実践により磨かれる」「日頃から、知識を判断、判断を行動に繋げる意識を強く持つ」「判断を左右し、行動を変える情報や知識こそ最重要」と提言する。


人間の陥りやすい特性として「人の認識や意思決定はゆがみやすい」「先送りというのは一見、決断を先送りしただけのように捉えがちだが、実のところは『決断しないという大きな決断』をしたことに他ならない」「ブレない生き方は、ヘタをすれば思考停止の生き方」に触れ、注意を促している。


心すべきは「これからの時代における最大のリスクは、変化に対応できないこと」「原因と結果のどちらが時間的に先行しているかを常にチェックする」「賛成の意見と反対の意見を敵とにばらまいて、議論の収拾をつかなくし、現状を存続させる方向にもっていくのは、情報コントロールの基本中の基本」「価値観や哲学の問題には、自分自身で決着をつけるしかない」「どんなに困難な状況、困難な時代にあったとしても、前を向いて歩いていくしかない」とする。


著者はディベートの重要性を強調しているので、ディベートについての言及も多い。「ディベートは、根拠が8割、根拠が命」「大きな問題は、小分けにし、同時に2つか3つの議論すべき論題について考える」「正しい主張の3条件、主張に根拠がある、根拠が反論にさらされている、根拠が反論に耐えた」「判定は、質×量×確率で考える」などは、日常においても参考になる。


情報整理についても「推論の部分は相手も無意識に言っていることが多いので、そこに対して重点的にツッコミを入れる」「マスメディアの報道とは逆の意見を集める」「原典にあたることを習慣にすると、他者より一段上の意見を言える」あたりは、今すぐ取り組みたい。


著者の主張がわかりやすく整理されており、これは新書ながら読み応え抜群。「読書とは格闘技。さらっと読んで終わりにするのではなく、著者の言っていることを1ページ1ページ、咀嚼しながら読む」は耳が痛いが、ぜひ、一読をお勧めしたい。