世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】角田陽一郎「運の技術」

今年56冊目読了。TBSの名ディレクター、プロデューサーとして名を馳せた筆者が、AI時代を生きる僕たちに必要なたった一つの武器を紹介する一冊。


煽り文句や、概ねの訳知り目線の話はともかくとして、「農業革命は田んぼ的、産業革命はエクセル的、情報革命は渦巻き的」という洞察は非常に秀逸だと思うし、さすがテレビという流行を追いかけて時流を掴み続けた人物の見解だなぁと思う。筆者の結論は「良い人生とは、悪い経験もすること。その人生観を持つこと自体が、開運の第一歩」としているが、上記「革命」ごとの事象の捉え方がすべてのように感じる。「自分自身に実体はなく、自分の周囲にいろいろな人が集まって、自分自身にいろいろな作用を施し、自分からいろいろなものを生み出す」「十分な数の人からの十分な信用があれば、ただで自分の時間が手に入れられる」「ある形態に固執するのではなく、状況に応じていかようにも対応できる」などは、まさに情報革命によって現れた時代の生き方を示すといえる。


もちろん、タイトルの煽りに従ったことも記載している。運を上げる・開運をもたらすためには「自分の名前で勝負する。それは、あらゆる物事を自分ごと化する」「自分がこれからやろうとしていることには、キャンペーンとして名前を付ける」「常にベストパフォーマンスを心掛ける」「わずかな縁、ほんのすこし糸口が露出しているチャンスを自分ごととして見逃さずたぐり寄せた先には運が待っている」「感度を働かせ、物事をシャットアウトしない、オープンなマインドで手当たり次第に経験したり、人と会ったり、おもしろがったりしていれば、そこで蓄積された経験や培われたさまざまな感受性の何かと何かが、ある瞬間に時間を超えて突然つながる確率はものすごく高まる」は、心理学的にも非常に納得がいく。


また、避けるべきこととして「流行に乗らないと、運が開けない」「好きがなければ、苦しくなると続けられない」も、確かにそうだなと思う。


人間観察においても、きらりと光るフレーズがいくつか登場する。「若さだけを武器にしてくると、若さがなくなった瞬間、他のよい所がないので、職場からニーズがなくなり、疎まれる」「性格の悪い人って、やる気がない人」「責任を負いたくない人は寛容さを装って『なんでもいい』を連発するが、その実は単なる『面倒くさい病』」「『頭がいい』というのは偏差値や知識の量ではなく、本質的には『洞察力』や『想像力』」のあたりは、今後、人間関係に活用していきたい。

 


「現状に対して『うん』と頷けば頷くほど『運』は舞い込むものであって、『ふーん』と懐疑的で不本意な気持ちを抱えれば『不運』になる」のように、言い廻しにこだわって鼻持ちならないところがあり、ストレートに読みやすいかというと(こういった自己啓発本初心者はともかく)違和感を持ちやすい本。しかし、本当に「革命」ごとの捉え方だけは読みごたえがある。その点はお薦めの一冊。ただ、ちょっと「開運」に寄りすぎて、疲れるのは間違いない。