世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】海老原嗣生「クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方」

今年55冊目読了。人材コンサルティング会社ニッチモ代表取締役の筆者が、「夢はあきらめると、けっこうかなう」というキャリア論の古典であるクランボルツ理論をわかりやすく解説した一冊。


これは、超のつくお勧め本だ。骨太な中身が、実に分かりやすくまとめられている。本をあまり読まない人にも、すんなり読めるように工夫されていて、スルスルと頭に入ってくる。


まず、「夢とか趣味とか目標とかって、どんどん変わっていく」という当たり前ながら見落としがちな指摘から入る。
そのうえで、計画的偶発性理論の骨子を「キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される。その偶発的な出会いを豊富にすれば、キャリアも人生も豊かになる。」「豊かな人生を手に入れるための5つの習慣は、①好奇心②持続性③柔軟性④楽観性⑤冒険心。これにより、新しい自分が見つかり、自分が磨かれる。まずはこだわりを捨て新たな機会を増やす。夢はいつだって見つかるから」と読み解く。


そして、「そこそこの成功を収める可能性は2〜3割ある。そのための掛け金はたった一つ、一生懸命頑張ること」「夢はしっかりこだわって、その結果、消化して、次の夢に行く」「夢はかなえるものでも、見つけるものでもなく、見つかるものなのだ」と提言。今を一生懸命頑張る、ということは、傾注しているU理論にも一脈通じるものがある。


成長に関して非常に興味ある身としては、「一番成長するのは、できるかできないかギリギリの目標のとき。それには生かし場が含まれていること、逃げ場がないことが大事」「他人から与えられた機会には、生かし場が含まれている」「悩むことは気付くことだ。気付いたら改めろ。それが成功につながる」のあたりは非常に考えさせられる。


戒めとして「謙虚であれ、初心を忘れるな」「少し成功すると、多くは天狗になり、周囲の言うことを聞かず、新たなチャンスを紡げなくなる。それは、柔軟性と好奇心の低下」「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行しろ」のあたりは、心に留め置きたい。


日本ならではの指摘にして、人事・雇用のカリスマである筆者の「仕事がつらくても辞めるな。会社がつらいなら辞めろ」は、リーダーとして、自分も相談を受けた時に使ってみたい言葉だ。


リーダーは資質ではなく経験学習によるもので、その大きな要素を占めるのが失敗や挫折、というのも、勇気を与えてくれる。


図解や有名人を使った比喩、歯切れの良い言葉が心地良く、マンガでも読んでいるのか?というくらいサクサク読め、理解できる。新書で、これだけの中身をこんなに平易に?と驚くばかり。全ての人が一読すべきだし、雑誌が読めれば余裕で読める。これは本当に素晴らしい本だ。こういう出会いがあるから、読書はやめられない。