世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

[読了】小和田哲男「知識ゼロからの国宝入門」

今年47冊目読了。日本中世史を専門とする静岡大学名誉教授が、日本史に輝く至宝である国宝の謎と物語を、豊富な写真を交えて紹介する一冊。


学校の日本史レベルを理解していれば、しっかりと頭に入ってくるように工夫されており、また、写真が豊富なので「あぁ、こういう物件なのか」ということがとてもイメージしやすい。また、それぞれの国宝のこぼれ話的な紹介や「鑑賞のツボ」「ZOOMUP」などで、興味を引くようにうまくまとまっている。


もともと、戦前より脈々と息づいている国宝。しかし、21世紀に入ってからは、世界遺産の後塵を拝しているような状況が続いている。とはいえ、その価値が下がったのではなく、むしろ世の中(≒マスコミ、旅行会社等)の取り上げ方によるものが大きい。この本では、超メジャー級の国宝ばかりを取り上げており、かつ親しみやすい。そして、「へぇ、こんな国宝があるのか!」ということを気づかせてくれる。


2018年に1回だけ開催された国宝検定を受験するために入手したのだが、これはなかなか良書である。国宝となっている素晴らしい物件を知るためにも、また国宝そのものの体系を理解するためにも、コンパクトさ、見やすさの点からも入門にもってこい。


2020年5月現在、コロナ禍により国宝を鑑賞することそのものが難しい。それにより、保全に必要な費用が賄えない状況が想定される。様々な困難を乗り越えてきた宝を、この時代に途絶えさせるわけにはいかない。そんなことを、「天変地異、疫病の流行などの厄災を仏法の力でおさえようとした」廬舎那仏坐像(いわゆる奈良の大仏)のページを見ながら思ったりする。


日本の歴史を、至宝と共に振り返り、視野を広げる。そんな手引きになる一冊だ。