世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ガルリ・カスパロフ「決定力を鍛える」

今年44冊目読了。史上最強と謳われるロシアのチェスプレイヤーにして政治家の筆者が、チェスを通じた人生哲学を明かす一冊。


ブックカバーチャレンジが回ってきて紹介したので、4年ぶりに再読。やはり、良書は改めて読んでみるとその価値がわかる。


どうも、もともと読み方を間違っていたようで、「自己認識と挑戦についての本、最高の判断を下せるようになるため自己と他者にどう挑むかを書いた本」と著者が述べるように、勝ちパターンを著した、というより、その思考を経て自らの挑戦を励ます本である。昔は、そう読めていなかった…


「私たちは意思決定プロセスの実践を通じて直観-無意識-の働きが向上していく」「分析や調査を創造的思考と結びつけなければならない」「分析と経験の組み合わせのプロセスを認識して、よりよい決断を下せるようにする」のあたりは、いかに認識をしながら自己を磨くか、ということの参考になる。


人間の陥りがちな罠としては「自我は敵の土俵でも勝てることを証明したがるし、そもそも実在もしくは潜在する批判的な人々を黙らせたいと思うもの」「知識が増えると、より多くのことを検討しなければならず、疑念が忍び込みやすい。考えすぎて本能が鈍り、速やかに決断すべきなのに頭の中で会議が開かれるようになる」あたりを気を付ける必要がある。


コロナ禍を生きるうえで響いたのは「環境が激変した場合に限り、根本的な変化を検討すべき」という言葉。「自問することを、過信と落胆という障害に打ち克つ強さのある習慣にしなければならない。それは絶えざる訓練でのみ発達させられる筋肉だ」「戦略家は前進するため、立場を強めるため、避けられない争いに備えるための手段を見つける」のあたり。


人生を生きるうえでは「時間というものは、単にマテリアルをふやすためではなく、マテリアルを改善するために利用すべき」「もっている知識を一歩前進させ、独創的な考えや問題解決に発展させるには、その知識から少しだけ手を放し、新たな視点や考え方をつかむことが必要」「精神のマンネリに陥るのではなく、本能を高めて頼れるものにするためには、物事を新鮮に保つ努力をしなければならない」「健全な自尊心をもたらすのは、苦労して得た成功と、さらに成功が訪れるという心からの信念」「リーダーシップというのは専門ではなく、統合と連携」「全体を見る力を養うには、実践を積み、或る程度無心になる」のあたりをしっかりと留意していきたい。


それにしても、ずいぶんと読み流していたものだ。読むたびに新たな気づきがある、というのは、まさに良書。今後も、一定の周期で読み返していきたい。