世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ロバート・ライト「何故今、仏教なのか」

【今年33冊目読了。科学ジャーナリストにして、ユニオン神学校客員教授の筆者が、瞑想・マインドフルネス・悟りの科学について自らの体験をもとに書き記した一冊。


〈お薦め対象〉
仏教に興味のある人、宗教は胡散臭いと思っている人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆


自分の問いは3つ。
『人間の陥りやすい特性は何か?』には「感覚にあざむかれ、ものごとを明晰に観ることができない。他人の行為については、悪さをその人の中に見つけようとし、環境要因に見いだそうとしない。どの思考も、感情が推進燃料となる」。
『瞑想にはどのような力があるか?』には「感覚を注意深く観察し、受け入れられる。世界をもっと明晰に見られる。成功が気にならなくなり、成功を追求しないとき、もっとも成功をおさめる」。
『陥りやすい特性を乗り越えるにはどうするか?』には「自分の思考は自分から生じるものではなく、自分の前をただ通り過ぎていくものとみなす。悟りと解放を相互に強め合うものとしてとらえる。やむを得ず後戻りをすることがあっても、時間をかけて少しでも進歩する」。


科学ジャーナリストらしく「自然選択は、遺伝子を次の世代に伝えるよう設計されている」とし、陥りやすい錯覚として「自我が実際よりもものごとをちゃんと掌握できていると考える。自分自身を有能な正直者と考える」と指摘し、「感覚が人を惑わせる。すべての根底にあるのは幸せの妄想」とバッサリ斬り込む。


実際に瞑想のコースに臨んだ体験談、それを科学的な視野で観る、という独特な本だが、西洋と東洋のミックスは非常に興味深い。また、そんな西洋人たる著者が「悟りとは、どこでもないところからの眺め」という東洋思想の真髄に触れているところも、実に面白い。


高度成長期に、過度に西洋側に寄りすぎて、その軋みに苦しむ21世紀の今の日本に暮らすからこそ、一読したい本だ。ただ、実用には、それなりの瞑想トレーニングが必要となる。やはり、改めて、瞑想の時間をとる必要があるなぁ…