世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

L・フェスティンガー、H・W・リーケン、S・シャクター「予言がはずれるとき」

今年17冊目読了。スタンフォード大学教授、ミネソタ大学準教授、コロンビア大学教授の三名が、この世の破滅を予知した現代のある集団に潜入し、そこで起きる心理を学術的に検証した一冊。


サトウタツヤ「心理学の名著30」で紹介されていたので読んでみた。
「人々がある信念や行動に深くコミットするとし、明らかにその誤りを証明する証拠を得た場合には、ただ、さらに深い確信と布教活動の増大という結果が生じる」という驚きの法則を見出す。その理由は「不協和(注:信念と現実の乖離)は不快を生み出し、それに応じて、不協和を低減させたり除去させようとする圧力を生じる」からであり、具体的には「人は、不協和に関わる信念、意見、あるいは行動のうちの、一つあるいはそれ以上を変化させようとするかもしれない。また、すでに存在する協和を増大させ、それによって不協和全体を低減させるような、新しい情報あるいは信念を獲得しようとするかもしれない。あるいは、不協和な関係にある諸認知を忘却してしまうか、その重要性を減少させようとするかもしれない」と読み解く。


そして、終末思想については「キリスト教の伝統においては、神によるこの世の創造という始まりがあり、したがってその終わりもある、という直線的な歴史観がある。」としたうえで「終末論的な予言が強く信じられる一つの有力な心理的要因として、現実状況において、強い恐怖ないしは不安がそもそも存在していたことが考えられる」とする。


この本の結論である「もし、人がいったん行った行動とその人の本当の信念とが食い違っているならば、大きな不協和を生じるはずであるが、いったん行動をとった以上は行動したことを取り消すことはできないわけで、不協和を低減させるには、主として、自らの信念を変化させ、すでに行ってしまった行動に対応した協和的な信念をもたざるをえなくなる」は、誠に至当であり、その価値は高い。


しかし、あまりにも潜入調査の記述が冗長かつ迂遠であり、本当に読み疲れる。5,000円という価格からしても、明らかに専門書。上記のまとめは示唆に満ちているが、一般人が読むものではないな…