世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】蓑田胸喜「国防哲学」

今年131冊目読了。昭和16年、太平洋戦争突入前夜の状況において、右翼思想家である著者が激しく持論を展開する一冊。

とにかく、自分と意見を異にするものはとことん批判し、日本と日本人を極端に賛美しまくる中身で、最初は唖然とし、読み進めると頭が痛くなり、最終的には「独断と偏見の恐ろしさ」を知るに至る。

引用すると、その凄まじさを改めて感じる。「民族国家の総力が挙げて国防全体の目的に合成せらるるところに、始めて現時局の要請する高度国防国家体制は実現せらるるのである。然しながらその成否を決するものは人、国民の精神的団結である。」「皇国軍隊の武力戦に於ける無敵は、おのづから仇のこころも靡くといい、鬼神もなかするという、いつくしみの日本人道精神の仁愛無敵の然らしむるところなることはいうまでもない。」「思想的に東西文明を統合融化せる日本は既に、成就せられたる世界文化単位である。」「戦争に対する崇高なる信念は、日本臣民としてはその主体目的たる日本国体に対する神聖観念、日本文化に対する崇高なる信念なくしては之を堅持し得るものでないこというまでもない。」「帝国大学の反国体学風と大新聞大雑誌の亜流無気力風潮とを寸毫も改革し得なかった政府当局者の思想的無力昏迷が政治の貧困の根本原因で、この状態を打開することが現下の根本課題である。」「私益の全体を挙げて公益に融化する歓喜力行・感激法悦の世界を渙発現成するということが、高度国防国家体制の完璧を期する真実の国民精神総動員運動である。」

その舌鋒の鋭さは、どこから出てくるのだろうか。恐るべき自己肯定と他者破壊。絶対主義の罠をまざまざと感じさせる。そして、その勢いの良さに囚われ、全体主義の材料として「消費」された時代の空気。後知恵で批判するのは簡単だが、この罠は注視しないと引っかかってしまう。

今や、怪書と分類すべき本ではあるが、時代の空気と恐怖を感じるという観点では興味深かった。