世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ショウペンハウエル「読書について 他二篇」

今年125冊目読了。17世紀のドイツ哲学者の巨匠が、読書、思索、文章について考えを書き表した一冊。

まず、考えるということについて「いかに多量にかき集めても、自分で考え抜いた知識でなければその価値は疑問で、量では断然見劣りしても、いくども考え抜いた知識であればその価値ははるかに高い。」「我々が徹底的に考えることができるのは自分で知っていることだけである。」と強く述べる。

そして、読書に耽る事への戒めとして「読書は思索の代用品にすぎない。読書は他人に思索誘導の務めをゆだねる。」「かりにも読書のために、現実の世界に対する注視を避けるようなことがあってはならない。」「一般読者は愚かにも新刊を読みたがり、良書を手にしたがらないのである。」と警告を発する。

また、書くということについては「すぐれた文体たるための第一規則は、主張すべきものを所有することである。あるいはこと規則は第一規則どころではなく、第二第三をほとんど必要としないほどの、充分な規則である。」「人間の力で考えられることは、いついかなる時でも、明瞭平明な言葉、曖昧さをおよそ断ち切った言葉で表現される。」「比喩は知識を得るための強力な武器である。だからこそ目覚ましい比喩をあげ、すぐれた比喩を見せてくれる人は、明らかに深い理解力の持ち主である。」と述べる。

最後に、読書に際しての心構えとして「熟慮を重ねることによってのみ、読まれたものは、真に読者のものとなる。」「紙に書かれた思想は一般に、砂に残った歩行者の足跡以上のものではないのである。歩行者のたどった道は見える。だが歩行者がその途上で何を見たかを知るには、自分の目を用いなければならない。」「良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである。」「重要な書籍はいかなるものでも、続けて二度読むべきである。」と語りかける。

読書好きの端くれとしては、非常に耳が痛い(眼が痛い?)記述多数。確かに、読んでも考えたり行動したりして「体得していく」プロセスがないと無駄に陥るからなぁ。他方、多読をバッサリ切り捨てるのは、現代社会においてはどうだろうか。情報爆発の21世紀においては、ある程度の知識を網羅する必要があり、ショウペンハウエルの生きた時代には考えられない世の中になっている。そこで考えるには、かなりの知識の蓄積が必要となり、かつそこに立脚しないと無知蒙昧な独り善がりに陥ってしまう。

やはり、多読、アウトプット、行動を通じて知を「体得する」しかないかな、と思う。しかし、参考になる記述も多数。読書好きなら、押さえておきたい一冊だ。