今年121冊目読了。小説家にして劇作家の著者が、「旦那の顔が異常に歪む」という事を通じて人間の関係性を掘り下げる一冊。
俗説的に「夫婦はだんだん似てくる」と言われる。そこに、敢えて挑戦するような、非常に面白い切り口の作品。旦那の気の緩みと、顔のパーツの崩壊をシンクロさせ、だんだんとその恐怖に陥れていくシナリオは、ある意味、本谷ワールド。ついつい、読み進めてしまう麻薬的魅力が、そこには、ある。
…他方。なんだか「筆者の技巧に踊らされた」感も、否めない。「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ。」で感じた圧倒的なパトスの温度感が、自分には感じ取れなかった。
勿論、「別の人間、ねえ。うーん、だって結婚って、相手のいいところも悪いところも飲みこんでいくんでしょ?もし悪いところのほうが多かったら、お互いタマったもんじゃありませんよ」「主婦のことはねえ、主婦にしか分からないわよ。」など、心に染み入る言葉はあるし、そのパワーは激しい。
…しかし。自分としてみては、熱量が違うのだ。その本の、エネルギー。それは、シンクロ感によるのかもしれない。