今年112冊目読了。日経新聞記者を経て、明治学院大学教授となった筆者が、昭和天皇が祈り続けたことは何だったのかを描き出す一冊。
令和の時代になって、今日(10月22日)は即位礼正殿の儀。これをはじめとして、天皇家には様々な神事があるが、その中身と明治から昭和にかけての変節が極めてよくわかる。これを一読すると、そもそも明治天皇が神事を軽視していたことなんて、本当にびっくり。いかに、人間は「現在、自分が知っていることから過去を後知恵で推察する」という罠に陥るか、ということをまざまざと見せつけられた感がある。
また、昭和天皇と貞明皇后(大正天皇の后にして、昭和天皇の実母)、及び高松宮(昭和天皇の実弟)との確執を見るにつけ、「近しいから仲が良い」というわけではない、ということを痛感。「現人神」といいつつ、そこは人間なんだなぁ、と感じたりする。他方、あくまで敗戦の責任は先祖が第一、国民が第二であったこと。及び、国民に対して謝罪の言葉がなかったことは、戦後の天皇像を見ていると意外な感じがするが、これもまた、マスコミによって「創られた」印象なのだろう。結局、昭和天皇は戦前も戦後も基本的に変化していない、と喝破する著者の眼力に驚くばかりだ。
歴史には、こういう経緯がある。そして、どうも現代日本人たる自分としては、和装をしていると「古よりの伝統」と勘違いしてしまう傾向があるが、実際には明治以降の「神格化」など様々な思惑があることを知ることで、その罠を逃れることができる。
「知は力」。それを感じずにはいられない。