今年101冊目読了。津田塾大学教授の筆者が、終戦後から六者協議に至るまでの日朝交渉の歴史経緯を書き表した一冊。
全体的に、北朝鮮への配慮トーンが強すぎないか?という感じはするものの、交渉の流れとその都度の挫折の経緯、内外的要因などが丁寧に描かれている点は良い。歴史経緯をおさらいするには、分かり易くまとまっている。
また、内外にあまりにも変数の多い外交の難しさと、それ故に変数を見ながらカードを切り合って「こちらのデメリットを最小限にしつつ、相手から引き出すメリットを最大化する」という極めて難しいセンスが求められることがよくわかる。
そして。断片的情報、一時期の断面を見ただけの感情的世論というものが、いかに国益を考える際にややこしいものか、もよくわかる。
外交関係のニュースを見ると、感情的に反応する、あるいはコメンテーターの話を鵜呑みにする、となりがち。しかし、「ここに至るまでの経緯、お互いの主張と狙い、周辺国の思惑が複雑に絡み合った一断面が表層化しただけだ」という認識を持つだけで、立ち止まることができる。そうやって外交ニュースに向き合うだけでも、全然違うだろうな。
筆者の丁寧な記述により、示唆するところは多い。なかなか勉強になった。