今年95冊目読了。昭和を駆け抜けた名作家の著者による、清純な恋の牧歌的小説。
端的に言って「綺麗すぎる箱庭的な小説」。三島由紀夫自身の人生への向き合い方、ストイックさ、燃える情念とその最期を考えると、あまりにも予定調和の綺麗さにまとまっている。後書きを読むと、ギリシャの話を下敷きにして日本版に換骨奪胎している、とのことだが、それにしても、主人公が純粋過ぎる。
確かに、情景表現、感情表現はさすがの巧さだが、人間の本質をえぐり出す力強さは感じない。三島由紀夫という癖の強いバーに入って、スポーツドリンク飲まされたような感じだ。
逆に言えば「三島は、こんなのも書けるんだ…」とも思う。40を過ぎて味わい深く読める本ではないかもしれんな。