世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】パトリシア・ウォレス「インターネットの心理学」

今年89冊目読了。メリーランド大学大学院で教授を務める筆者が、オフラインとは異なるネットでの人間心理を考察した一冊。

…なのだが。これが怖ろしく読みにくい。書いてあることの個別については「なるほど、なるほど」と首肯できる。しかし、総体として「じゃ、結局我々はどうすればいいんだ?」ということについて、全くといっていいほど処方箋がない。ばらばらなパーツとしては成り立つが、それが大きな樹木となっていない、という体感しか得られない。

「オンライン場面では、人は他者との相互作用場面で抑制がきかなくなり、たやすく平静さを失う」「面と向かったときの感情的知性は高くても、オンラインでは鈍感になる」「オンライン環境は集団極化を生み出しやすい」「脱抑制を促進するのはフラストレーション、匿名性、不可視性、物理的距離」「過信は、私たちが自己中心的な方法でものごとを見聞きすることで起こる」「人はものごとを単純化することを好む。いろいろな人間行動に潜む複雑性に取り組むよりも、人々にレッテルを貼るほうがはるかに楽だから」「ネットは、中産階級を空洞化し、二極化する。かつ、犯罪やハッキング、ストーキングなどの問題が深刻化する」など、個別の指摘は至当だ。

しかし。じゃ、どうするのか?という点については「私たちはみな、いましているコミュニケーションの向こう側に生身の人間、それどころか無数の人間がいることを忘れてはならない」しか処方箋がない。また、今後についても「確実に言えるのは、これからも大きな驚きが我々全員を待ち構えている」という「そりゃ、当たり前だろ」という事しか言及していない。

久々に、読むことに非常に疲れた。興味と暇があれば、止めはしないが、絶対に積極的にはお薦めしない。