世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】立花隆、佐藤優「僕らの頭脳の鍛え方」

今年85冊目読了。元・記者にして作家の筆者と、元・外務省主任分析官にして作家の記者が、必読の教養書400冊と頭の鍛え方を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
現代社会を生きるのに危機感を覚えている人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『読書の特性は何か?』には「読むことで回路が開ける、人間をつくるもの。疑似体験の力により、現実に立ち戻ることができる。古典には、知の共通基盤としての役割がある」。
『人間の負の行動特性は?』には「検証すべき情報が厖大だと、いちいち自分で検証していたら疲れるので、とりあえず指揮者の言っていることを事実として受け止める。嫌な状況が続くと、悲惨な結果を招いてもいいから早く終わってほしいと思うようになる。物語を唯一の真実と信じるようになると、とんでもない方向に行ってしまう」。
『今の時代、留意すべきことは何か?』には「大事なことは、知へのモチベーションを高められるかどうか。教養とは、今、自分が遭遇している未知の問題から、構造をテキストから読み取れる力。歴史は常に反復する」。

「日本人に賭けている最大の教養アイテムは地政学」「芸術的感覚がないと、政治も経済もわからない」「受験勉強は、記憶と条件反射だけであり、その枠組みから抜けられなくなるという観点で、やりすぎると頭が悪くなる」などの面白いコメントが、すべてぶ厚い読書に支えられた中身であり、新書ではあるが本当に重厚な中身。そして、何より400冊のお薦め書籍リストが超・秀逸。これ全部読んだら、少しでもこの先人たちに近づくことができるのだろうか…

「読書」と「それに基づき、実世界を自分の頭で考えてみる」。この2つの往来により、脳を鍛えていく必要があろう(「脳トレ」なんて簡単な言葉で深みある思考ができるわけもない)。お薦めの一冊だ。