今年77冊目読了。フランスの誇る巨匠作家による、短編集。
バルザックといえば壮大な長編、というイメージが強いが、本著を読んで、全く違う側面もあることがわかった。特に表題作には圧倒された。あらゆるところに張られている伏線が(正直、読んでいるときには伏線とすら気づかない)、ラストに向けてことごとく回収されていく。そして、衝撃のラスト。その締めも、あまりにもすさまじいインパクトを残す。どういう頭をしていたら、こんな小説を構築できるんだろうか!?
その伏線の巧緻さに、思わず2度読み返してしまった。読めば読むほど「あぁ、なるほど…」と圧倒されていく。極上の推理小説って、こんな感じなんだろうな。しかし、ベースにあるのが「人間の片面的なものの見方」という大いなる視野なので、とても面白い。正直、表題作があまりにも凄すぎて、あとの小説はチョイチョイ…という感想に陥ってしまった。
これだけ面白いのだから、これはバルザックの長編も必読、ということだな。こんな面白い古典を見逃していたというのは非常に後悔しきり。