世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】チェーホフ「ワーニャ伯父さん/三人姉妹」

今年64冊目読了。ロシアの文学家としては異例の短編小説・戯曲に活躍の場を求めた鬼才が、生きていくことの悲劇を描いた戯曲二編を収めた一冊。
 
期せずして「文学中年」として小説を読み進めている身としては、今まで何冊も「いや、こりゃ読むタイミングが遅すぎた…」というものにぶち当たってきたが、本書は閉塞感を抱えている中年が愚痴を言いながら読むのに最適。そして、何よりチェーホフ先生の冷徹な突き放しによって「あぁ、こんな愚痴を言って『俺の人生、どこで間違ったんだろう』『もう、今更遅いよな』って考えていても、何も改善しないんだよな」という事実を突きつけられることが秀逸。
 
どんな本にも「旬」というものがあるが、この本は中年にとってこそ旬である。特に、リンダ・グラットン「LIFE SHIFT」によって「人生100年時代」ということが叫ばれるようになった現代社会にいるからこそ、過去のパラダイムに囚われた「昭和おじさん・おばさん」に強烈なインパクトを残すこの一冊が非常に効き目がある。この年代であれば、ぜひ、一読をお勧めしたい。
 
冷たい中でも、チェーホフ先生の世間観察が光る記述を少々紹介しよう。
「世の中が滅びるのは、悪党のためでもなければ火事のせいでもなく、憎悪だとか敵意だとか、ささいな小競り合いのためなの…」「大事なのは才能があるってことよ。才能があるって、どういうことかわかる?大胆で、ものごとにとらわれない頭脳、とてつもなく広い考え方なのよ…」