今年63冊目読了。このタイトルを知らないものはいないといってもよい、冒険小説不朽の名作。
「不遇により無人島に漂着し、そこで生き延びた男の物語」程度だと思っていたが、さにあらず。主人公、そもそも人生の選択において、いちいち控えめに言って「クズ」である(笑)。そりゃ、一人で無人島に漂着するわけだ(これは主人公自身も認めている)。そして、生き残りのための様々な知恵と行動によって、だんだん孤独なれど豊かな生活を得るようになり、かつては「くそくらえ」と思っていた神への信仰を確立していく、という「単純な冒険小説ではない心理をえぐる重厚さ」が面白い。
もちろん、そこここに「そこでこうなるかよ」というご都合主義的な流れがないわけでもない。ただ、それを割り引いても、通奏低音として流れる「人生において、あるものを大事にし、感謝する」という在り方は、非常に大事なものを今なお伝えており、故に今まで語り継がれてきているのだろう。
それにしても、28年の無人島生活を経てなお、実はこの本には続編・続々編があるという巻末の解説で驚愕した。主人公、どんだけ冒険クズ野郎なんだ(苦笑)。
とはいえ、この本は現代にこそ数々の教訓をもたらしてくれる。何より、久々に「寝る時間を削ってまで読み進めた小説」であった。以下は、特に心に残った言葉。
「物事の真の意味を知るようになれば、苦しみからの救済よりも罪からの救済のほうが、遥かに祝福すべきことだ」「ものがないという不満は、あるものに対する感謝の不足から生じる」「危険を目の前にしたときの不安というものは、危険それ自体よりはるかにわれわれを戦慄させる。われわれを大いに苦しめるのは、危険の対象ではなく不安のほうなのである」「人生において私たちは必死になって不幸から逃げ回る。それでも不幸に陥ることがあり、そうした状況はこの上なく恐ろしいことではある。しかし、それがかえって救いのきっかけとなることも多い。私たちが苦境を脱するのは、まさしくそのような救いによってなのだ」