大山祇神社所蔵。黒漆塗りの鉄と革の平札(ひらざね)を交互に幅広の紺麻糸で威した鎧。社伝によれば、伊予の豪族河野通信(みちのぶ)が、壇之浦合戦戦勝のお礼に奉納したものといわれる。
800年の歴史を超え、日本を二分した源平合戦の最終決戦の記憶を今に伝える一品。兜まで揃っているため、その威風堂々たる佇まいは一層の迫力を伝えてくる。しかも、当時においては「海戦は平家」であり、そこをあえて源氏について戦って勝利を得た河野通信にとっては、「神の御加護」という思いは強かったであろう。
もちろん、物件としての素晴らしさもさることながら、こうして「歴史に思いを馳せる」ことができるのも、国宝の魅力だ。