世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】丹羽真理「パーパス・マネジメント」

今年49冊目読了。Ideal LeadersのChief Happiness Officerである筆者が、社員を幸せにする経営について書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
社員の「本当の」働き方改革を考えるリーダー
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆

自分の問いは3つ。
『経営は何に目を向けるべきか?』には「苦境より、楽しいことからイノベーションは生まれる。働き方改革の本質は、誰もが活躍するということよりも、誰もが幸せに働くこと。付加価値を高めれば、疲弊してまで時短を追求しなくとも生産性は上がる」。
『幸福であることの組織にとってもメリットは?』には「幸福な人は他社を助け、組織を護る。幸福な人は正しい判断ができる。幸福度が高い人は、エネルギーにあふれ、ストレスからの立ち直りも早い」。
『幸福を大事にするために、組織は何をすべきか?』には「個人の存在意義を大事にする。幸せを味わうため、より存在意義を強く意識して、その実現を目指すループを作る。組織の風土を変えるため、誰かが勇気をもって一歩を踏み出し、旗振り役になる」。

「仕事における幸せを形作る要素は、存在意義、自分らしさ、関係性、心身の健康」など、非常にいいことが書いてあるし、実際「働き方改革」の掛け声が全くいかがなものか?と感じられる現状においては、的確なところを突いている気がする。
しかし、「もともとそういう思想がある組織」であるか「組織トップ自身がそういう考え方を抱いている組織」以外については、この考え方や在り方を実装するのは極めて困難であり、事実、本書においてもそこに対する処方箋は描き切れていない(ゆえに、お薦めは★5なのに実用は★3)。

そして、「パーパス」という、人材開発、組織開発に知見を持つ人なら理解できるが、人口に膾炙しているわけでもない言葉を持ち出すと、組織改革は極めて難しい。お薦めな本ではあるのだが、そのへんが弱い。さらりと読めて、良書ではあるが。