今年45冊目読了。ドイツの劇作家、演出家、詩人である筆者による、ガリレオ・ガリレイの地動説から異端裁判、その顛末までを劇作として描いた一冊。
ブレヒトの軽いタッチで、しかしながら重たい話のやり取りが進んでいく様は、とても面白い。先見の明がある天才が、守旧派勢力から疎んじられ、弾圧され、表向きは屈服せざるを得ない、という状況は、人類社会の業であり、今なお繰り返される悪癖であることを痛感する。
「科学は知識を扱うが、知識は疑いから生まれる。」「科学の唯一の目的は、人間の生存の辛さを軽くすることにある。」「英雄がいない国が不幸なのではない。英雄を必要とする国が不幸だ」などの名言は、今なお輝きを失っていない。
愛国心を抱きながら、ナチスドイツの迫害を免れるために亡命を余儀なくされたブレヒト。その人生の苦悩が、この芸術作品を結晶化させることに役立っているのは間違いない。苦悩や影にぶち当たっても、逃げることなく向き合い、自らの血肉に昇華させること。その大事さを、感じずにはいられない。
変化が激しく、故に変化への抵抗も作用・反作用で激しくなっている21世紀だからこそ、必読書と感じた。