今年37冊目読了。 神学校をドロップアウトし詩人になった筆者が、少年から青年に進みつつある人物の苦悩と交流を描いた一冊。
ひょんな事から、善良そのものの道から外れ、暗い世界に足を踏み入れてしまう主人公。そして、それを助けるも、寧ろ問いを投げかけることで主人公を善良の殻から引きずり出す役割を果たす友人デミアン。そして、光と陰の対立から混沌、そして融合へと苦悩しながら進む主人公。そこへ、戦争が影を落とし、意外なラストへとなだれ込む。
話の軸になる部分で、キリスト教が深く関わっている。いかんせん、信仰心のない自分には理解できないが、これが理解できれば、さらに身体への染み通る度合いが上がるんだろうな…と感じる。
善と悪、光と陰。この対立と、それを超えたところにある融合は、普遍的テーマである。親の庇護という殻を抜け出すのに、経験を先んじている友の手助けがある、というのも、真理を突いている。故に、本書は名著として今なお読み継がれているのだろう。
「車輪の下に」同様、本書も十代に読むべきだったな…と感じつつも、40過ぎの中年が読んでも、十二分に面白いし、身につまされる部分は多い(←成長してないだけか)。
子供の頃の読書量の少なさを恨んでも仕方ないが、これも「自分には、理解できるタイミングで良書が回ってくる」ということ、なのだろう。人間の成長について、大いに示唆ある一冊だ。