世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【国宝:志野茶碗】

一月の「雪松屏風図」が、あまりにも圧倒的だったが、実はこっちも凄いんです!!!

16~17世紀、三井記念美術館。垣根に見立てられる文様が絵付けされた、桃山時代の茶碗。美濃大萱の牟田洞窯で焼成されたとされる。卯花墻の銘は、内箱の蓋裏に記された和歌から。
美濃地方で採れる白土に、半透明の長石釉(志野釉)を掛けた志野は、それまで日本になかった白いやきもの。初めて絵付けがされた。
この茶碗は、轆轤で成形したあとに篦で削り、手で力を加えてわざと歪ませている。
茶碗の白い肌と井桁のような文様を卯花が咲く垣根になぞらえ、蓋裏に「山里の 卯花墻の 中つ道 雪踏み分けし 心地こそすれ」、表に「卯花墻」の銘。江戸時代初期の茶人、片桐石州の筆とされる。石州は、大和小泉藩の藩主で、四代将軍家綱の茶道指南役。
卯花墻は、江戸時代は豪商の冬木家に伝わり、明治に大阪の山田家を経て、明治20年頃に室町の三井家に入った。
日本で焼かれた国宝茶碗は、卯花墻と、本阿弥光悦の白楽茶碗 銘 不二山のみ。

釉の厚い部分の白い光沢と、濃淡の緋色が調和する様が、志野の最大の魅力。底の部分にかけて、細かい貫入(釉がかかった部分に入るひび)もある。高台の露胎(釉がかかっていない部分)は三角形。これは、容器に満たした釉に器をくぐらせて施釉するズブ掛けの際、意図的に掛け残したもの。鉄を含んだ絵具に筆を浸して描く鉄絵の技法で、自由に意匠を描いた。これは、長石釉では下絵が流れないことから。

やっぱり、写真の二次元ではわからない、荘厳な佇まい。国宝の持つパワーを感じる。そんな、見事な工芸品。「リアルに見ることが、いかに大事か」。それを、分かり易く感じさせてくれる。