世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】山口謠司「文豪の凄い語彙力」

今年24冊目読了。大東文化大学文学部准教授の筆者が、文豪が実際に使っていた文章から、知性と教養溢れる語彙を、漢字の成り立ちを含めて読み解く一冊。

無知蒙昧であるが故に、不勉強であるとの誹謗に対しても拱手して甘受しなければならない自分。今まで「読了、読了」と臆面もなく標榜し、言葉を玩弄して冊数に拘泥し、知識の醸成を怠っていた事実を突き付けられ、哀怨な気持ちだ。
生中な覚悟で読むと、自分の知識の偏在を突き付けられ、蒼惶と立ち尽くし、荒涼とした気持ちになる。
この本を読んだことを契機に、耄碌することなく、恬然と学び、精励恪勤の紳士となる人生への出立をしたいものだ。

…ふぅ。この文章で19個使った。出てくる語彙は63個。まだまだだし、何より「使うことが目的」では、上記のごとく「ただただわかりにくい」文章になってしまう。なにとぞ、ご海容いただきたい(←これで20個)。

冗談はともかくとして、漢字という「表意文字」はそれそのもので面白い。そのことを思い出させてくれる、非常にわかりやすい説明がまた秀逸。漢字、今一度勉強してみるかな…という気になる。そもそも「パソコン・スマホ病」で、漢字の書き取り力は圧倒的に落ちているし。

昨今「大人の語彙力」に類する本を多数本屋で見かけるが、読んでみると「なんだかなぁ…」という気持ちになる。ちょっとしたビジネスマナー程度の表現で「語彙」というのはいかがなものか。
そもそも、豊富な語彙は「人生の先達が闊達に使いこなすことに憧れ、自らもそれを指向して学ぶ」ところから始まるように思うのだが。入社2年目に、先輩が「我々の主張が正しいということが認められた証左です」とメールに書いているのを拝読し「うわぁ、すげぇ!」と思ったのは今でも思い出す。

そして。表現に難渋し、何度も何度も推敲し、そして適正に自らの思いを表現できる言葉を選び取る。それこそが、語彙力を鍛えることなのだろう。LINEやtwitterを否定するつもりもないが、やはり「文章を練り込む」というのは、場数を踏まないとできない「構え」なんだろうな。

いやぁ、面白い一冊だった。