今年23冊目読了。いまさら説明するまでもない名作「星の王子さま」を、原題にして訳した一冊。
読んでみると、「これ、どこが子供向けなんだよ!?」と思うくらい深みのある中身に驚く。かつ、子供でもまぁまぁ楽しめそうな中身になっているということもすごい。人生における警句を、わかりやすく、かつ端的に伝えているので、さらりと読めるが、立ち止まると実に深い、という魔法のような文章。
また、これに出てくるイラストが実にいい。サン・テグジュペリの多才さを示すようなこのイラストにより、さらに本としての完成度が高まっているのは間違いない。しかし、これはただ才能を活かしただけではなく、磨き込み、鍛え上げたことは容易に想像できる。また、第二次大戦に入っていく中で、非常に厳しい立場に置かれた著者の状況が、さらにそのセンスを逞しく練磨し、この小説が仕上がっている、と感じると、本当に味わい深い。
「おとなってさ!」という物言いに対し、「大人」になっている(精神的にはまだまだ修行が必要なれど、少なくとも身体的には…)身としては、非常に思うところある。痛みを感じつつも、齢を重ねている今だからこそ「瑞々しいこどもの魂を取り戻し、今までの経験と融合させて新しい世界を観る」ために読みたい。そんな一冊だ。