世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】チャールズ・ディケンズ「クリスマス・キャロル」

今年21冊目読了。19世紀に活躍した筆者が、クリスマスを切り口に人間の過去・現在・未来を見つめる名作。

守銭奴スクルージといえば、ヴェニスの商人に出てくるシャイロックと並び称されるほどのインパクト。そのスクルージが、4人の霊とのやり取りによって、不思議な体験をすることを通じて心が揺さぶられていく…というのが概要。まぁ、あまりにネタばらしするのは本意ではないので控えるが、その結末は、個人的には「おいおい…」と感じてしまう(←ひねくれ者)。

ただ、「人間は経験という時間の連なりによって自らの行動を知らず知らずのうちに縛られている」「破滅的な未来を目前にしないと(いや、目前にしてもなお)なかなか人は変化することができない」など、きわめてU理論の提唱する原理と同様のことが記されている。これは、驚きと共に「やはり真理は昔から見えており、それを学ばず体感しようとしない人類は何度も同じミスの罠に陥るんだな…」と、なんとも複雑な気持ちになる。

そして、周囲から見ると「なんだその行動は?!」と見えることでも、本人からしてみれば「いや、周りがみんなわかっていないだけだ!!」という認知のズレが発生している。このあたり、本当に巧みに描かれているなぁ、と感嘆する。

余談だが、西洋のクリスマス観を大きく作り上げた、という点でも背景がわかって面白い。