今年19冊目読了。名探偵シャーロックホームズを生んだ筆者が、南米の秘境への探検を描き出した小説。
世に出たのが第一次大戦前の1912年。それから100年以上経ち、もちろん探検は数々なされ、様々な生物多様性が見つかっている。しかし、そんな今でもなお、まったく色褪せない探検物語。動植物の描写の細かさ、生き生きとした雰囲気もさることながら、探検隊のメンバーの個性が非常に際立っていて、これがこの小説を一世紀以上生き残らせてきたんだろうな、と感じる。研究者同士の意見の対立、ひと山当てようという冒険心、そして主人公のやや邪な動機。このほかの登場人物も含めた心理描写と行動描写が実に面白い。
個人的には、探検の「後日譚」がまたスパイシーで楽しい。研究者の論敵とのバトル、主人公の思い描く姿と現実のギャップ。特に後者は「まぁ、さもありなん」という感じである。やはり、人間、自らの強い使命感でなく、甘い欲望で動くとろくなことはない。とはいえ、何がきっかけで人生というものが違う方向に転がっていくのかわからないのもまた、事実。
これを読むと、チャレンジする勇気が湧いてくる。元気のないとき、怯えにとらわれている時に読むと、効用が大きい一冊なのかもしれない。