先日、昼休憩に国宝を見てきた。三井記念美術館では、1月に国宝が見られるのだ。来年は、職場が移転するので昼休憩では到底見られなくなるので、このチャンスに。
〈雪松図屏風〉
円山応挙が18世紀後半に描き、三井記念美術館所蔵。陽光にきらめく雪の中に3本の松だけが迫真性をもって描かれる。
応挙は1733年に丹波国の農家に生まれ、京都の高級玩具商の尾張屋に奉公。主人・尾張屋勘兵衛のつてで石田幽汀に絵の基礎を学び、宝鏡寺蓮池院尼公に仕えてパトロン円満院祐常を得て狩野派や既存の画法、中国・西洋絵画まで学び、本草学(博物学)や中国写生画の流行を背景に、写生(ものの形を完璧に写し取ることを通じて本質に迫る)に目覚める。そのわかりやすさは、宮廷から富裕町人層まで幅広い人気に。与謝蕪村とも交流があり、後に円山四条派という流派を生み出し、源碕、長沢芦雪などの弟子が活躍した。
右隻には一本の老松、左隻には二本の若松、画面下方の金砂子があらわすまばゆい雪の輝きが、粉雪のイメージと重なる。
老松は上部の松叢から枝が真っ直ぐ伸び、迫り来る視覚的効果を生んでいる。若松は、左が少年、右が青年のごとく樹齢が異なり、左手前から右奥へ伸びている。これにより、三次元的空間を感じさせる。
雪は、金砂子で光の反射を、白い紙の色という塗り残しで表現。
松は、輪郭線を使わず、筆全体に淡墨を含ませてから穂先に濃い墨をつけ、筆を寝かせて描く「付け立て」と、モチーフの片側を徐々にぼかす「片ぼかし」で描く。
離れてはじめて背景のような迫力を持つため、応挙みずから「遠見の絵」と呼んでいた。
やはり、本物の国宝は、いい!!近づいてじっくりと、そして応挙が言うように遠くから。屏風の放つエネルギーに、鳥肌が立つ。本物が持つ価値、というのは、こういうことなんだろうな。
絵画、工芸品系の国宝は、公開タイミングを狙わないと拝見できないのが難点だが、実際に見ると、それだけの価値がある。豊かな休憩時間を過ごすことができた。