世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】中原淳「女性の視点で見直す人材育成」

今年16冊目読了。立教大学経営学部教授にして、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長の筆者が、だれもが働きやすい最高の職場をつくることを提唱した一冊。

〈お薦め対象〉
経営者、人事担当者、そして働くすべての人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『なぜ、女性の働きやすさを考えるべきなのか?』には「女性が管理職や役員としてリーダーシップを発揮している状態と、企業業績にはプラスの相関がある。多様性がもたらす混乱や葛藤がチームを強化し、イノベーションのきっかけとなる。女性はライフイベントによってキャリアが大きく左右される可能性があるため、仕事について長期的目線で考える機会が多い。職場の機能不全は、マジョリティたる日本人・男性・正社員には見えづらく、女性は最もメジャーなマイノリティ」。
『働くにおける男女の意識差のポイントは?』には「女性は仕事のやりがい重視、男性は見返り重視。男性リーダーは調整・決断が苦手で、女性リーダーは葛藤・不確実性でつまづきやすい。男性は報酬や権限拡大など与えられるものの大きさで昇進を受け入れるが、女性が一歩を踏み出すには、なぜ私なのか?に答えるプロセスが必要。女性たちは、活躍する女性への妬みを敏感に察知しているが、男性はそんな妬みが職場に渦巻いていることを認識しない」。
『職場リーダーは何に留意すべきか?』には「プレイヤーたちに最良のストレッチ(背伸び)をあたえて、プレイヤーたちの成長を引き出す。何がよくて何が悪かったかに関する意味づけを基盤に今後の対策を考える。ワーママの心理を理解しサポートするため、メンバーたちの負荷状況を見える化し、メンバー同士の助け合い行動を評価する」。

私淑する中原淳先生の本は、安定の読みやすさ。しかも、データの裏付けが確実なので、「それ、ホントかよ?!」というような提言も、すんなり入ってくる。組織開発、リーダーシップ、大人の学習といずれも非常にためになったのだが、今回の本もとてもためになった。「人が育つ環境をつくっていくことこそ、究極の人材開発」の言葉は、肝に銘じよう。

単なる「女性活躍推進」だけの視点ではなく、幅広くダイバーシティやリーダーシップ、組織の認知を改める、などが盛り込まれているため、女性は共感を持ちながらだろうが、男性もおおいに気づきを得ながら読み進めることができる。今、必読の一冊といえる。