今年11冊目読了。巨匠・太宰治が、名作ハムレットを大胆に置き換えることに挑戦した一作。
小説好きの名古屋時代の朋友から勧められて読んだのだが、これが実に面白い。どうしても、ハムレットはイギリスの文化を知らないと読み切れない、という感覚があったのだが、巨匠・太宰の力によって、見事に換骨奪胎され、日本人の感覚に実にフィットする形であの悲劇が組み立てられている。あらすじそのものも揺さぶる、「こりゃ、一般的な翻訳者では絶対にできない…」というダイナミックさは、読んでみてこそわかる、というものである。
もちろん「これがハムレットかよ!」という批判もあろうかと思う。しかし、そもそもシェイクスピアのハムレット自体が原作の換骨奪胎であり、その意味では孫・換骨奪胎ともいうべき一作である。いやいや、よくぞここまでやってくれたものだ。その視座の転換、それでいて根っこにある文脈は変えずに和風に仕立て上げる力。凡人では永遠に到達できない、文筆の妙味を存分に味わうことができた。
図書館でちらっと見て、気になってはいたが、朋友のプッシュにより、読書まで至ることができた。ぜひ、ハムレットと共に一読をお勧めしたいとともに、持つべきものは読書友達だ、ということも改めて痛感。いやいや、人生であと何冊読めるかわからない中で、実にいい本を読むことができた。ありがたや。