世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】福田直子「デジタル・ポピュリズム」

今年9冊目読了。アメリカとドイツに30年在住経験のあるジャーナリストの筆者が、操作される世論と民主主義を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
選挙権のあるすべての人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★☆☆☆

自分の問いは3つ。
『インターネット時代の特性は?』には「ビッグデータは、知識や情報から意味あるパターンを見出して予測する。アルゴリズムが検索結果を選んで提示していることを、私たちが理解していない。広告収入を狙うソーシャルメディアやウェブサイトはクリック数がすべてで、SNS検索エンジンは人の偏見を強める」。
『インターネット時代のリスクは?』には「IoTは個人データを吸い取る監視機器でもある。ネット上の活動がどのように裏で使われているか、利用者は知りえない。多くの人が、自分の偏見をネットで確認するため、事実はこうである、という説得が難しい」。
『我々は何に留意すべきか?』には「アカウントで、写真が細かくピクセル化していたり、プロフィールが書かれていないとボットの可能性が高い。サイトへの特定企業の出資やURL、サブタイトルなどで信用できるサイトかチェックする。注目度の商人や、注目を集めたい書き込みに対しては無視する」。

最近の選挙へのネットの影響と、その影で暗躍する力を描き出している。確かに面白いし、わかりやすくまとまってはいるのだが、いかんせんどうにも「掘り下げが甘い」感じがする。イーライ・パリサー「フィルターバブル」を先に読んでいたせいか、「まぁ、そうだよね」という程度にしか感じない。自分の中では、新しい気づきはなかったし、「では、自分はどうすべきか?」というレベルでの処方箋も弱すぎる。

とはいえ、こういったことをまったく知らない(GoogleやYahoo!の検索結果はだれでも同じになる、と思い込んでいる)人にとっては、衝撃の一冊だろう。新書でさらりと読めるのはメリットなので、この感想を見て興味が湧いたらご一読をお勧めしたい。「ああ、なんとなく知っている情報っぽい」と感じるのであれば、読む必要はない。