今年5冊目読了。これまた説明するまでもない、シェイクスピア「四大悲劇」の一つ。
世の無常(無情)、正直の持つ傷つきやすさ、それに伴う悪徳の栄えとしっぺ返し。それでもやはり、最後は報われない悲劇的結末。「いやいや、シェイクスピアさん、もうちょっと世の中には救いってものがないんですか?」と聞きたくなるくらいだ(実際、本作の種本となった原作では、ハッピーエンドバージョンもあるらしい)。もともと人を見る目がないリア王が悪さの起点といえばそうなのだが、それにしても狡猾極まりない娘たちの立ち振る舞いには反吐が出る。しかしながら、哀しいかな、人間である以上自分もそういった要素を抱えているんだよな…ということを感じながら読み進めていくあたりが非常に心を痛くさせる。
また、リア王の本筋と共に進むエドマンドの活躍(?)もまた、人間の「正当化の力の恐ろしさ」を見せつける。「理屈と膏薬はどこにでもつく」と言われるが、まさにそれを体現するような話である。とともに、自分を振り返ってみると、当然のこと、自分の手前勝手な理屈を振りかざしてきた過去の様々な失敗に思いが至り、これまた非常に気持ちが重くなる。
四大悲劇、これで全て読み切ったわけだが、やはりシェイクスピアというのは人間の感情を知り尽くしていた、と感嘆するしかない。特に負の感情、怒り、妬み、忌み、復讐など。どれもこれも、破滅的な結果をもたらすしかない。そのことを、直感的に知っていて、このような悲劇を描き出したのかもしれない。人間の業、それでもそれに向き合うしかない。その悲痛さ、苦しさを存分に味合わせてくれる。まさに、時代を天才が超えていく、その事実を痛感させてくれる。